2021年07月
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細胞壁安定性を維持する酵素発見 インド細胞分子生物学センター

インド・ハイデラバードの細胞分子生物学センター(CCMB)は6月7日、Escherichia coli などの細菌の細胞壁の安定性と完全性を維持するのに役立つ酵素を発見したことを発表した。

ネイチャー・インディアや発表論文によると、研究者のマンジュラ・レディー(Manjula Reddy)氏の率いる研究チームが、Escherichia coliなどの細菌の細胞壁の安定性と完全性を維持するのに役立つ酵素、LdtFを発見した。研究チームは、LdtFが、細菌の外膜と、細菌を環境ストレスから保護する内側のポリマー層との間の共有結合の形成に重要な役割を果たしていることを突き止めた。

グラム陰性菌の細胞壁には外膜と内膜があり、2つの膜の間に挟まれているのは、保護層を形成するアミノ酸と糖のポリマーであるペプチドグリカンの層である。リポタンパク質は、外膜をペプチドグリカンの層に結合することが知られていたが、リポタンパク質とペプチドグリカンの間の結合を変化させる因子については不明であった。レディー氏らの研究チームは今回の研究で、遺伝的および生化学的手法を用いて、LdtFがペプチドグリカンからリポタンパク質を切断できることを確認した。

さらに研究チームは、LdtFの欠損が増殖阻害を増強し、細菌のペプチドグリカン-リポタンパク質結合を増加させていることを発見した。このことは、この酵素の存在が、ペプチドグリカンに結合したリポタンパク質のレベルを低下させることや、ペプチドグリカン-リポタンパク質結合を調節する役割を担うことも示唆している。

レディー氏は、このようなLdtFを介した細胞壁の調節は、変動する環境条件において細菌に柔軟性と生存上の利点をもたらすと指摘。そのうえで、今回の研究成果が、基本的な細菌の細胞壁生物学を理解し、新しい抗菌薬の開発のための代替薬剤標的を特定するのに役立つことが期待される、としている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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