ナレンドラ・モディ首相による大規模な内閣改造(7月7日)の直前、科学技術相(地球科学相、保健家族福祉相を兼務)であったハルシュ・バルダン(Dr. Harsh Vardhan)氏が突然辞任した。辞任は、教育相と労働相が辞任した直後のことで、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の深刻な影響で、教育や保健という重要な分野を担当する部署が大きな困難に直面していたことがうかがえる。
バルダン氏は、モディ首相政権が誕生した2014年に保健相に就任し、今回は兼務で2度目の保険相の任期中であった。医師でもあるバルダン氏は、COVID-19のパンデミック勃発後、国産ワクチンの開発にも取り組んできた。しかし、コロナ危機の最中、彼の様々な発言は、政府の対応を強く擁護する一方で、無神経で現場の現実を知らないと批判される場面もあったとの報道もある。
科学技術相と地球科学相の後任には、前任のバルダン氏と同様に医師であるジテンドラ・シン(Dr. Jitendra Singh)氏が任命された。シン氏は1956年11月生まれの64歳で、BJP(インド人民党)入党するまでは、ジャンムー(Jammu:現在のジャンムー・カシミール連邦直轄領)の政府医科大学・病院で糖尿病・内分泌学の教授を務めていた。2014年、同氏はウダンプル(Udhampur)のロク・サバー(下院議員)選挙区で当選し、2019年の選挙で再選された。これまで、宇宙庁(DOS)などの戦略的に重要な科学部門を経験しており、今回、科学技術関連分野の大臣就任は自然な流れとみられている。2014年のモディ政権が発足した際にも、短期間ではあったが、科学技術省と地球科学省の事務局を担当した経験がある。
バルダン氏は「閣内大臣」であったが、後任のシン氏は「閣外専管大臣」であり、それは科学技術省の地位が下がったとの見方もある。
以下のようにシン氏は、科学技術相をはじめ、首相府と人事・苦情・年金担当の閣外大臣など6つの大臣職を兼務することになる。
シン氏の新職(兼務):
新しい保健家族福祉相には、マンスク・マンダビヤ(Shri Mansukh Mandaviya)氏が就任した。同氏は化学・肥料相も兼務しており、いずれも「閣内大臣」で重要なポジションである。
閣僚会議(内閣)は、首相と各大臣によって構成される。首相以外の各大臣は内閣を構成すると同時に、省庁の長でもある。大臣には「閣内大臣」(Cabinet Minister)と「閣外大臣」(Minister of Sate)があり、内閣は「閣内大臣」で構成される。
「閣外大臣」には、①省庁を監督する「閣外専管大臣」(Minister of State (Independent Charge))と、②閣内大臣を補佐する「閣外大臣」(MoS:Minister of State)の2種類がある。「閣外大臣」は「閣内大臣」に対しての報告義務があるが、「閣外専管大臣」は単独で職務を行う。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部