過去、野生で個体群の数が減り歴史的な絶滅の危機に瀕したことが、近親交配した個体と、遺伝的に多様なトラの亜種を分けていった。
AsianScientist - トラは概して長い間、遺伝的に多彩な動物であったが、中には、近親交配の結果生まれたトラもあった。おそらく、歴史の特定の時点で個体数が減少したことによるのであろう。この調査結果は、科学誌 Molecular Biology and Evolution に掲載された。
個体のゲノムは生物史の本のようなものである。時間の経過とともに種に影響を与えてきた独特の出来事を反映している。ただし、同じ種の中でも、各個体のゲノムはごくわずかに異なる場合があり、通常は目や髪の色などの物理的特性の違いとして現れる。 一般に、種の遺伝的変異が多ければ多いほど、生存の可能性は高くなる。
幸運にも、最近はシーケンシング技術が進歩したために、私たちは現在、生物史の本を読みゲノム全体の遺伝的変異を解釈することができる。この技術を使用して、インド国立生物科学センター (NCBS)、米スタンフォード大学をはじめ世界の動物学研究機関の研究者からなる国際的なチームが、トラのゲノム変異が発生するプロセスを知ろうとする3年間の専門プロジェクトを完了した。
トラの保存には大きな注目が集まっている。それにもかかわらず、その進化の歴史とゲノム変異についてはあまり知られていない。これらの情報は、保存活動に大いに役立つであろう。
この目的のために、チームは4つの亜種の65頭のトラの全ゲノムを配列決定した。チームはデータを使用してさまざまな集団ゲノム解析を実施し、遺伝的多様性、近親交配の影響、変化を引き起こしたかもしれない出来事、個体群動態、および地域の適応について詳しく調べた。
「トラは、種のゲノムの多様性を作った無数の歴史的出来事の優れた例であり、地球上で最も貴重な種の絶滅を食い止めようとするときに、この多様性を理解することの重要性を示しています」と共同責任著者であるスタンフォード大学のエリザベス・ハドリー (Elizabeth Hadly) 教授は説明する。
興味深いことに、チームの分析からインドのトラのゲノム変異は全体的に他のトラの亜種よりも大きいことが分かったが、いくつかの個体の変異は小さく、これは近親交配を示している。このような近親交配は、個体数の減少または小さく隔離された保護地域内での繁殖の結果であるかもしれない。さらに、インド北東部のトラは、インドの他の個体群と最も異なっていることが分かった。
研究者らは、近親交配した個体のゲノムと、独特な亜種のゲノムとが、比較的最近である過去2万年以内に分岐したことも発見した。データはさらに、すべてのトラについて個体数が大きく減ったことがあることを示しており、個体数の減少とそれが遺伝的変異へ及ぼす悪影響の重要性を強調している。
「私たちの研究から、インドのトラのゲノム変異が全体的に大きいのは、個体数が大きく減少したために劇的に発生したことが分かりました。個体群管理と保存活動には、遺伝的変異に関する情報を組み入れる必要があります」
共同上級著者のNCBSのウマ・ラマクリシュナン (Uma Ramakrishnan) 博士はこのように話している。