インドの研究者グループは、グアー豆（guar bean）とカニやエビの殻から抽出した多糖類であるグアーガムとキトサンを用いて、環境に優しく無害な生分解性ポリマーを開発した。2021年10月5日にインド科学技術省が発表した。同研究成果は、科学誌 Carbohydrate Polymer Technologies and Applications に掲載された。

多糖類は、包装材料の合成に利用できる可能性が高いバイオポリマーのひとつである。しかし、多糖類には、①機械的特性が低い、②水溶性が高い、③バリア性が低い、などの欠点があるため好まれてはいない。

そこで、このような多糖類の課題・欠点を克服するために、科学技術高等研究所（Institute of Advanced Study in Science and Technology）のデヴァシシ・チョウドゥリー（Devasish Chowdhury）准教授とインスパイア―・ジュニア―リサーチフェロー（Inspire Junior Research Fellow）であるサザドゥール・ラーマン（Sazzadur Rahman）氏は、溶液流延方法（solution casting）^（＊）と呼ばれる方法を用いて可塑剤を使用せずに、架橋多糖類であるグアーガム－キトサン複合フィルムを作製することに成功した。

製作されたバイオポリマー複合フィルムは、高い水安定性、高い機械的強度、過酷な環境条件への優れた耐性を持っており、研究者グループは、作製した架橋フィルムが240時間経過しても水に溶解しないことを発見した。また、架橋グアーガム－キトサン複合体フィルムの機械的強度は、一般的なバイオポリマーに比べて高いものであった（一般的にバイオポリマーは強度が低いことが知られている）。さらに、架橋グアーガム-キトサン複合体フィルムは、接触角が92.8度と高く、高い撥水性（疎水性）を示し、かつ、キトサンのみのフィルムと比較して水蒸気透過性も低かった。

このように，架橋グアーガム－キトサン複合フィルムは，優れた水分安定性、機械的強度，撥水性，過酷な環境条件への耐性を備えており、包装材用途への応用が大いに期待される。

^（＊）溶液流延法（solution casting）：材料を溶媒に溶融させ流動性を持たせた溶液（ドープ）を、表面を平滑にしたドラム（キャスティングドラム）やステンレス製の平滑ベルト上に流し込んで付着させ、これを加熱する工程に通して溶媒を蒸発させ、フィルムを成型する方法。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部