2022年07月
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低エネルギー消費で耐久性にすぐれたAIコンピューターチップを開発 インドのスタートアップ

インドのスタートアップ企業が、人工知能(AI)のコンピューティングに使用する低エネルギー消費で耐久性に富んだコンピューターチップを開発中だ、とインドのAI関連のポータルサイトINDIAaiが6月21日に伝えた。

高度な演算を行う機械学習(ML)や深層学習は、コンピューターの機能を担う中央演算処理装置(CPU)に重い負担がかかるため、従来のCPUでは限界があった。このため、AIで使われる並列コンピューティングをサポートできるCPUに対する需要が高まっている。インドのハイデラバードで2020年に設立されたセラモーフィック・テクノロジーズ(Ceremorphic Technologies)社は、韓国TSMC社の5nmプロセスを使ってエネルギー消費の低い半導体チップを設計している。

同社の創立者でCEOのヴェンカット・マッテラ(Venkat Mattela)博士が、前身となるレッドパイン・シグナルズ(Redpine Signals)社を起業したのは2006年。開発した低エネルギー消費のブルートゥースとWi-Fiチップを2020年にシリコン・ラボ(Silicon Labs)社に3億米ドル(約400億円)で売却し、現在はセラモーフィック社で新たなチップ開発を進めている。

AIでは、スーパーコンピューターでの膨大な演算の実行中に不具合が発生することは許されない。また将来的にAIをスーパーコンピューターではなくパーソナルコンピューターで演算できるようにするには、チップのエネルギー消費を大幅に低下させる必要がある。セラモーフィック社は、これらの問題をクリアしたチップの製造を目指しており、成功すればAIやMLがさらに普及する可能性がある。コンピューターチップのデザイン・製造は数年を要する長期的なプロジェクトであり、多大な投資が必要だが、マッテラ博士は独自の資金を投資し、2024年までの開発資金を確保している。

マッテラ博士は、「セラモーフィック社の特徴は持続可能なチップの開発という点です。インドには、チップのアーキテクチャをデザインできる才能ある人材がそろっている。ただ、企業間の競争が激しいため、有能な人材の維持が難しい」とチップ業界の競争の激しさを語る。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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