2022年10月
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新しいウイルス様粒子(VLP)を開発―新型コロナの安全な研究とワクチン開発に寄与 インド

インド理科大学院(IISc)微生物・細胞生物学部門(MCB)のサウミトラ・ダス(Saumitra Das)教授とその研究チームが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する安全な研究とワクチン開発に役立つ、新しいウイルス様粒子(VLP)を開発した。8月30日付け発表。研究成果は、科学誌 Microbiology Spectrum に掲載された。

インド政府のゲノム監視構想(INSACOG)の一環として、ダス教授らは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の亜種を調べるために、毎日数千のゲノム塩基配列の読み取りを行っていた。「突然変異の1つが公衆衛生の観点から危険かどうかを予測するときに、アッセイシステムが必要でした」とダス教授は言う。

SARS-CoV-2のような感染力の高いウイルスを扱うことは危険であり、バイオセーフティーレベル3(BSL-3)の施設が必要とされるが、インド国内にはわずかしか存在しない。ダス教授のチームは、この問題に対処するために、バイオテクノロジー庁(DBT)の資金援助を受けてVLPを開発した。このVLPは、SARS-CoV-2の突然変異の影響をBLS-3施設なしに安全に研究できるようにするだけではなく、ワクチン候補として開発する可能性もある。

ダス教授の研究室は以前、C型肝炎ウイルスの研究の中で、VLPが免疫を誘発できることを証明した。その経験を基に、COVID-19の世界的流行が発生したとき、SARS-CoV-2のVLPを人工的に合成する取り組みを始めた。

SARS-CoV-2は、スパイク・エンベロープ・細胞膜・ヌクレオカプシドの4つの構造タンパク質を別々に生成し遺伝物質を含むシェルに組み立て、活性ウイルス粒子を形成することによって複製を行う。これを再現するために、4つの構造タンパク質を生成し組み立て、急速に自己複製するバキュロウイルスを媒介としてVLPを合成した。分析の結果、作製したVLPがSARS-CoV-2と同様に安定していることも分かった。マウスに高用量のVLPを注射したところ、肝臓・肺・腎臓組織には影響がなかった。免疫応答のテストでは、マウス血清で多数の抗体が生成されたことを発見した。これらの抗体がSARS-CoV-2を無力化することも判明した。

研究チームはVLPの特許を申請していて、ワクチン候補として開発したいと考えている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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