2022年10月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2022年10月

新型コロナ感染でデング熱の症状緩和―デングウイルス抗原との交差反応を発見 インド

インド科学産業研究評議会(CSIR)傘下のインドケミカルバイオロジー研究所は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者の血液サンプルがデングウイルス抗原を中和し、デング熱の症状を軽くしていることを明らかにした。科学誌 Nature India が9月23日に伝えた。本成果は科学誌 International Journal of Infectious Diseases に掲載された。

デング熱は、蚊を媒介としてデングウイルスが感染して起こる急性の熱性感染症で、発熱、頭痛、筋肉痛や皮膚の発疹などの症状を示す。まれに出血症状があり、適切な治療を受けないと致死性となる場合もあることが知られている。 COVID-19流行の数カ月後、デング熱の流行地域で、COVID-19の重症度や死亡率による影響が比較的少なくなっていたことに興味を持った研究者たちは、COVID-19流行前のデングウイルス血清サンプルとSARS-CoV-2抗原との間に交差反応があるかどうかを血液検査で調査した。

ウイルス学者のスバジット・ビスワス (Subhajit Biswas)氏が率いるチームは、デング熱への曝露歴のないCOVID-19患者の約89%が、ストリップテストでデングウイルス抗原と交差反応することを発見した。さらに、COVID-19患者の血清サンプルが、デングウイルスの宿主細胞への侵入を有意に制限することを見いだした。

さらに、分子研究でデングウイルス抗体が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質のいくつかの重要なアミノ酸と結合し、宿主細胞の受容体への結合を阻害していることも明らかにした。「このことは、デング熱の流行地ではCOVID-19に対する部分的な免疫が存在する可能性も示している」と研究者らは指摘している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る