2022年11月
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新たな分子バイオセンサーを開発、がんの微小環境の検出が容易に インド

インド科学技術省は、最近開発された新たな分子バイオセンサーを使うことでがんの微小環境の検出を容易にする可能性があることを9月22日付けで発表した。

デリーにあるシヴ・ナダール卓越研究所(Shiv Nadar Institute of Eminence)のタティニ・ラクシット博士(Dr. Tatini Rakshit)が率いる研究室は、科学技術庁 (Department of Science and Technology: DST) のインスパイアー教員助成金(Inspire Faculty Grant)を受け、S. N.ボーズ国立基礎科学研究センター(S. N. Bose National Center for Basic Sciences :SNBNCBS、コルカタ)、サハ原子物理研究所(Saha Institute of Nuclear Physics、コルカタ)、およびインド工科大学ビライ校(IIT Bhilai、チャッティースガル州)と協力して、単一のがん細胞由来の細胞外小胞 (Extracellular Vesicles : EV) の表面上におけるヒアルロン酸(HA)の輪郭の長さを解明した。

がん細胞は、小さな包、すなわち糖分子であるHAで覆われたEV を分泌する。これは悪性の腫瘍と直接的な関連があり、結腸がんの早期診断の潜在的なバイオマーカーと考えられている。これらのEVは体液 (血液、糞便など) に豊富に存在し、すべての種類の細胞がこれらのEVを細胞外マトリックスに分泌することが知られている。がん細胞は正常細胞よりも少なくとも 2 倍多くのEVを体液に分泌する。したがって、これらのEVは、がんの早期診断のために患者の体から非侵襲的(non-invasively)に分離することが可能である。これらのがん EV に関連する糖分子 HA は、病理学的状態でヒアルロニダーゼ (Hyals) および活性酸素種によって断片化されると、腫瘍の進行における危険信号を伝搬することが分かっている。

(上図はPIBリリース文より)

同研究は、単一のがん細胞由来の EV が、単一分子技術を使用して非常に短い鎖の HA 分子 (輪郭の長さ が500 ナノメートル未満) でコーティングされていることを示し、これらの短鎖の HA でコーティングされたEVが、正常細胞よりの派生EVより、はるかに弾力性があることを解明したものだ。がんにおけるHAコーティングEVのこの固有の弾力性は、細胞外輸送、取り込み、細胞による排泄、細胞表面への接着などの際に複数の外力に耐えることができる性質を持っている。これらの発見は、砂糖でコーティングされた小胞が、がんの進行のリスクをどのように増加させるかを解明する上で有効であることを示唆している。

この研究は、Journal of Physical Chemistry Letters に掲載された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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