インド科学技術省は、科学技術庁(DST)傘下の独立研究機関であるラマン研究所 (Raman Research Institute: RRI)と、タタ基礎研究所(Tata Institute of Fundamental Research: TIFR)傘下の国際理論科学センター(TIFR-International Centre for Theoretical Sciences: ICTS)とが連携して、量子技術におけるノイズの役割と、その派生分野である量子ブラウン運動を調査し、量子ドメインのノイズが磁場内の荷電粒子にどのように影響するかを解明したことを発表した。11月24日付け。
さらに、磁場内における荷電粒子の超低温での相関の減衰における量子ノイズの役割を追跡調査し、その研究結果(Statistical Mechanics and its Applications)は、ジャーナル"Physica A"に掲載された。
ブラウン運動は、流体中に浮遊する粒子のランダムな運動であり、アインシュタインの独創的な研究により物理学の基礎的な柱を構成している。量子ブラウン運動は、開いた量子の連続的な自由度に関するダイナミクスのクラスの一つである。
これまで、研究者は中性ブラウン粒子の挙動を同様の文脈で研究してきた。しかし、超低温で適用可能な磁場内の荷電ブラウン粒子の遅い時間のダイナミクスを含む理論的研究は、今回が初めてという。
この研究では、位置相関関数、位置速度相関関数、および超低温原子実験でアクセス可能となる量子領域における速度自己相関関数と呼ばれる要因の減衰の性質について予測している。この予測は、粘性環境を作り出す光学糖蜜内の超低温(数ナノケルビン* のレベル)での磁場内の荷電粒子を調べることでテストが可能となる。
* ケルビン(kelvin: K)は、熱力学温度(絶対温度)の単位。
高温の古典的な領域では、相関関係は長時間にわたって急速に減衰する。対照的に低温領域では、相関の減衰が大幅に遅くなる。今回は、粒子を閉じ込める磁場と調和振動子トラップが、低温量子ドメインの相関の減衰にどのように影響するかの研究となっている。
磁場の強さは崩壊の振幅に影響を与えるが、量子ゆらぎが熱ゆらぎよりも支配的である場合、この崩壊は遅くなるという。この新しい研究では、磁場の存在下で環境と接触している荷電粒子が超低温にさらされたときにどのように振る舞うかについて、新たな光を投げかけている。
(上図はPIBリリースより)
量子テクノロジーは、量子コンピューターに保存された情報が環境の乱れに対して非常に脆弱であるため、量子テクノロジーにおけるノイズの役割を理解し制御する方法を明らかにすることは、長年の課題であった。この研究に関与した科学者は、最新の発見が既存の知識を深め、量子技術の領域でノイズを制御する方法を探る可能性があるとしている。現在、同研究グループは、スピンを持つ量子ブラウン粒子の振る舞いを研究中という。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部