インド工科大学マドラス校(IIT-M)は、同大学の研究者らが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関する中和抗体のプロファイルと、中和抗体の結合親和性および阻害濃度に関する実験データを含むデータベースAb-CoVを作成したことを発表した。11月9日付け。研究成果は科学誌 Bioinformatics に掲載された。
SARS-CoV-2は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のみならず、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などを引き起こす。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、SARS-CoV-2に関する大量の実験データと計算データが複数のオンラインデータベースに保存されるようになった。これらはデルタ株やオミクロン株のような変異株への対処にも重要な役割を持っている。一方で、SARS-CoV-2中和抗体の結合親和性や中和プロファイルについてのデータベースはまだ作成されていなかった。
今回、IIT-Mの研究者らが作成したデータベースAb-CoVは、中和抗体の結合親和性及び阻害濃度、中和プロファイルに関するデータベースとなっており、211のナノボディを含む1780のSARS-CoV-2関連抗体の詳細な情報をカバーしている。幅広い検索・表示オプションを備え、抗体名、ウイルスタンパク質のエピトープ、中和されたウイルス株、抗体、ナノボディなどをもとに検索・ダウンロードすることが可能だ。また、抗体やウイルスタンパク質の構造を3Dモデル表示する機能も備えている。
Ab-CoVの作成にあたってIIT-Mの研究者らは、SARS-CoV-2関連の数千の研究論文から中和抗体の結合親和性や阻害濃度に関する情報を、さらにCoV-AbDabという配列データベースから、SARS-CoV-2関連の全抗体のアミノ酸配列情報を収集した。
インドのタタ基礎研究所、国立生物科学センター(NCBS)のR ソウダミニー(R. Sowdhamini)教授はAb-CoVについて「今後の抗体設計のための貴重なリソースとなる包括的で優れたデータベースです」と話している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部