2023年01月
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バイオディーゼル - 水エマルジョンの調製へ新たな界面活性剤を開発―ディーゼルエンジンの再生可能燃料 インド

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は、同大学機械工学科のスダルシャン・ゴウリシャンカル(Sudarshan Gowrishankar)氏とアナンド・クリシュナサミー(Anand Krishnasamy)博士が、燃料油に水と添加剤を加えた「バイオディーゼル-水エマルジョン」を調製するため、新しい界面活性剤を開発したことを明らかにした。研究成果は学術誌 Fuel に掲載された。

バイオ燃料として知られるバイオディーゼルは、化石燃料由来のディーゼルと同等の性能を持つが、バイオディーゼルを燃料としたエンジンは、化石由来のディーゼルを燃料としたエンジンと比較した場合、多くの窒素酸化物を排出し、燃料も多く消費する。これらの問題を解決には、排出ガスの低減やエンジン性能の向上に寄与する「バイオディーゼル-水エマルジョン」の利用が有効である。マイクロエクスプロージョンと呼ばれる現象によって、燃料が小さい液滴に断片化され、燃焼が促進されるためである。

通常、燃料油と水を混合した「油-水エマルジョン」は非イオン性界面活性剤であるスパン80(Span80)とツイン80(Tween80)を用いて調製する。しかし、バイオディーゼルを用いた再生可能燃料を調製するには、再生可能な天然由来の界面活性剤が必要となる。本研究は、バイオディーゼル-水エマルジョン用界面活性剤として、ポリグリセリンポリリシノレート(PGPR)と生カランジャ油(RKO)が、Span 80とTween 80を用いた界面活性剤の代替になることを明らかにした。

ドイツ国立計量研究所の物理化学部門長を務めるラヴィ・フェルナンデス(Ravi Fernandes)教授は、以下のコメントを寄せ、著者らの業績を高く評価した。

「現在、バイオディーゼル-水エマルジョンは、ディーゼル-水エマルジョン用に開発されたSpan 80とTween 80を用いた界面活性剤から調製されている。しかし今回の研究は、既存の界面活性剤を用いたバイオディーゼル-水エマルジョンの安定性が良くないと結論付けた。さらに、安定したバイオディーゼル-水エマルジョンを調製するために、PGPRとRKOを含めた新しい界面活性剤を調査し、有効であることを示した。クリシュナサミー博士らは、バイオディーゼル-水エマルジョンを使用した高効率でクリーンな燃焼を達成する手段を見出した」

2022年11月29日付け発表

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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