インドのTranslational Health Science and Technology Institute(THSTI)社の研究チームは、比較ゲノム解析の手法を使って、ピロリ菌の薬剤耐性(AMR)が地域によって異なることを明らかにした。薬物に抵抗があり、病気の原因となる遺伝子は、東インドと南インドの系統で大きく異なった。研究チームは、この結果について「ピロリ菌のさまざまな株から潜在的な耐性機能を見つけるための核酸プローブの設計に利用できる」としている。

ピロリ菌は、慢性胃炎や消化性潰瘍、胃がんを引き起こす可能性がある。しかしながら、インドにおけるこの細菌の薬剤耐性や病原因子についてはほとんど知られていない。そこで研究チームは、東インドと南インドのそれぞれの住民から単離したピロリ菌32株を含む143株の全ゲノム配列を調べた。その結果、東インドの住民から単離した株は、南インドの住民の株と比べて、薬剤耐性遺伝子を多く持っていることが分かった。

さらに研究チームは、東インドのコルカタの患者から単離した20株をピロリ菌の治療に用いる抗生物質(メトロニダゾール、レボフロキサシン、アモキシシリン、テトラサイクリン、クラリスロマイシン、フラゾリドン)に曝露した。その結果、コルカタで得られた株は、メトロニダゾールとレボフロキサシンに対して強い耐性を示した一方、テトラサイクリンやアモキシシリン、フラゾリドンに対してはあまり耐性を示さなかった。

今回の研究に携わった研究者は、「ピロリ菌の治療において、臨床現場では適切な抗生物質を慎重に選択することが求められている。特に東インドと南インドでは特に留意する必要がある」と述べた。

科学誌 nature india が2022年12月14日に報告。研究成果は学術誌 Gene に掲載された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部