インド農業研究評議会(ICAR)の研究者らが参加する国際研究チームは、呼気に含まれる揮発性有機化合物(VOC)が肺がんを診断するためのバイオマーカーとして機能し、このVOCを測定することにより、健康な人から肺がん患者を識別できると発表した。

研究チームは今回のアプローチについて「肺がんを検出するための非侵襲的な方法に道を開く」と説明する。現在の肺がん検診は、高価で複雑な手順を取っている。費用対効果の高い代替案を探すため、研究者らは、シリコンマイクロリアクターと呼ばれる小さな装置を用いて、治療をしていないがん患者や良性肺結節の患者、健康な人の呼気に含まれるVOC濃度を調べた。

測定の結果、16種類のVOCが統計的に重要であることが分かった。中でもブチルアルデヒドと酪酸は、がん患者と健康な人を区別するためのバイオマーカーの上位2種類に挙げられた。また、VOCの異なる組み合わせを取ることによって、500回にわたってデータの交差検証は繰り返された。ブチルアルデヒドと酪酸ジシクロヘキシルケトンを含む上位3種類のVOCは、92%の精度で肺がんを検出することができた。

研究チームは、いくつかのVOCを用いて機械学習に基づいた分類モデルを開発し、VOCと肺がん患者の関連性を確立した。これによって肺がん検出のための時間とコストを節約でき、生存率の鍵となる早期発見に役立つと期待される。この技術は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検出など、他の疾患にも適用できる可能性があると研究者は考えている。

科学誌 nature india が2022年12月16日に報告。研究成果は学術誌 PLoS ONE に掲載された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部