インドは2022年12月1日から2023年11月30日まで、20カ国・地域(G20)議長国を務める。G20ではインドネシアとブラジルとのトロイカ体制で関連する各種の会議の日程が組まれている。その1つ、科学技術に関する重要課題を議論する「研究&イノベーション・イニシアチブ会合」(Research and Innovation Initiative Gathering: RIIG)のキックオフ会議が2月8、9の両日、インド・コルカタで開催され、様々な分野の科学者と行政官が「公平・公正な社会のための研究・イノベーション」をテーマに話し合った。インド科学技術省が2月9日付けで発表した。
今回の会合には、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、インドネシア、イタリア、オランダ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、スペイン、トルコ、アラブ首長国連邦、英国、米国、および欧州連合(EU)、国際ソーラーアライアンス(ISA)という国と国際機関を代表する合計36人の代表が参加した。インド政府の科学部門/組織からは約40人の代表と特別招待者が参加した(今回は諸事情により日本は参加していない)。
インドのモディ首相はこれまで、「イノベーションは科学の単なる目標であってはならず、科学のプロセスを推進するものでなければならない」と繰り返し述べてきた。そして、イノベーションが主導する科学進歩のために、RIIGは「持続可能な社会と持続可能な未来の創造」に向けて舵を切る。
RIIG 2023では、「公平・公正な社会のための研究・イノベーション」という幅広いテーマの中で、
という優先度の高い4分野に向けた科学における課題と機会に焦点を当てられた。
これらのテーマ別会議は、
― の4都市でそれぞれ開催される予定。
今回の会合でインド側主要関係者のコメントは以下の通り。
● 科学技術庁(DST)長官のS.チャンドラセカール博士(Dr. S. Chandrasekhar)は、「G20は国際協力を通じて、発展・成長、経済、持続可能性に対して、最大の影響を与え足跡を残している。RIIGのテーマは、公平・公正な社会のための研究とイノベーションであり、イノベーションは常に産業界やビジネスから政府、学界、医療に至る生活のあらゆる側面における進歩の礎石となってきた。我々の国、地域社会、人々に利益をもたらす革新的な研究を解き放つという共通の関心に対応し、全体的な進歩のためにグローバル・パートナーシップを構築したい」と述べ、変化を推進する責任を強調した。
● 前宇宙庁(Department of Space: DOS)長官で宇宙委員会メンバーでもあるキラン・クマール博士(Dr. Kiran Kumar)は、「研究とイノベーションは新たな機会をもたらし、新しいテクノロジーが社会にどのように役立つかを確認する必要がある」と話した。
● DSIR長官でCSIR委員長でもあるN.カライセルヴィ博士(Dr. N. Kalaiselvi)、は、「グローバルコミュニティとして、G20は再生可能エネルギー機器の製造・生産を10倍から15倍へと大幅に増強する必要がある」と強調。そして、エネルギーの生成、変換、貯蔵の分野、特にグリーン水素とグリーンアンモニアの生産、エネルギー貯蔵装置のエンド・ツー・エンド(end to end)生産、およびサプライチェーン管理において、G20諸国間のパートナーシップの必要性を強調した。
● DBT長官のR.ゴカーレ博士(Dr. Rajesh Gokhale)は、循環バイオエコノミーの2番目の優先分野を紹介し、インドの「ミッションLIFE」(環境のためのライフスタイルの推進)を強調した。これは一般的な「使用して廃棄する」とう経済の実態を、「他に配慮し熟慮された使用(消費)」という循環型経済に置き換えることを想定している。また、インドがグリーンインドを実現するため、合成生物学に基づく持続可能な製造をベースとする、世界クラスの専門知識、施設、および熟練労働力を育成する高性能なバイオ製造技法実現のための政策枠組みを開発・構築中であると述べた。
● 地球科学省(MoES)長官のM.ラヴィチャンドラン博士(Dr. M. Ravichandran)は、持続可能なブルーエコノミーの達成に向けた科学的課題と機会、海洋生物資源の持続的かつ公平な利用を確保し、気候変動に対抗するためにブルーカーボン容量を強化する必要性について説明した。
● SERB長官のA.グプタ博士(Dr. A Gupta)は、第3の優先分野であるエネルギー転換のためのエコ・イノベーションを紹介し、世界のエネルギーシナリオと、持続可能なエネルギーへの移行を通じて気候目標を達成するためのインドの取り組みを強調。また、二酸化炭素の回収、利用、貯蔵、水素経済、電気自動車の研究開発などの分野における研究とイノベーションへの取組みが、エネルギー移行の主要な原動力となると述べ、さらに、加盟国の持つ科学技術における強みは、優先課題の特定に役立ち、二国間、多国間でのパートナーシップや共同研究プログラムを通じて活用・推進されるであろうと付け加えた。
さらに、RIIGサミットとG20研究大臣会合は、今年7月にインド・ムンバイで開催される予定であり、研究とイノベーション分野におけるG20での協力推進ロードマップに関する共同宣言がG20研究大臣によって採択される見通しだ。
RIIG会合の模様 (写真はPIBリリースより)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部