インドのデリー大学の地質学者はインド中部のマディヤ・プラデーシュ州の5つの村にまたがる地域にあるナルマダ渓谷下流で、チタノザウルス(Titanosaurs)の多数の営巣地と256個の卵の化石やその断片を発見し、この恐竜が孵化(ふか)後は子育てしていなかったことを示唆していると発表した。科学誌 nature india が2月10日に報告した。研究成果は学術誌 PLOS ONE に掲載された。
今回、研究チームが2017年から2020年にかけての現地調査で発見したチタノザウルスの卵は、6600万年前のものと推定されている。卵の化石には、ほぼ無傷の卵の外形、孵化した卵、未孵化の卵、卵殻の破片、卵の底面、孵化窓、殻が2枚ある異常な卵、圧縮された卵などが含まれていた。巣と巣の距離が近いことや卵の種が異なることからチタノザウルスはコロニーで営巣していたことが分かった。
また、異常な卵を生むことは生理的ストレスや環境ストレスが原因であると考えられた。これらの結果は、恐竜が現代の鳥類と同様の生殖生理と巣作りパターンを持っていたことを示唆している。巣の周辺には親の恐竜の化石が見つからなかったことから、卵を生んだ恐竜はその場所には住んでいなかったことが示唆された。さらに胚や幼体も見つからなかったことから、孵化後の子どもはすぐに巣から這い出し自活するようになったことも判明した。
デリー大学の地質学者で本研究の主著者であるハルシャ・ディマン(Harsha Dhiman)氏は「これらのことは、親が大きいと卵を押しつぶす可能性が高くなるため、チタノザウルスは子どもの世話をする行動が存在しなかったことを示唆している」と唱える。また、カナダのカルガリー大学の古生物学者であるダーラ・ゼレニツキー(Darla Zelenitsky)氏は「比較的狭い地域にこれほど多くの恐竜の巣が見つかるのは極めて異例だ。これらの発見は恐竜が繁殖地やコロニーでどのように営巣したか、そして子どもの世話をしたかどうかについて理解するために重要となる」と今回の発見の意義を語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部