2023年03月
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熱傷の傷治療に有効なナノ粒子ゲルを開発 インド

インドのチャンディーガルにあるパンジャブ大学の薬学研究所と基礎医学研究所の研究者らは、緑膿菌のバイオフィルムに感染した熱傷の治療に、抗菌薬であるレボフロキサシンとクローブ油を含むエマルジョンゲル(LFX-NEゲル)が有効であることを明らかにした。科学誌 nature india が2月12日に報告。研究成果は学術誌 Colloids and Surfaces B: Biointerfaces に掲載された。

熱傷により、世界で毎年30万人が亡くなっている。その原因の多くは、緑膿菌や黄色ブドウ球菌による感染症である。これらの細菌によるバイオフィルム感染症は抗生物質に耐性があるため、従来の治療法では、抗生物質で数週間から数カ月治療しても、あまり効果が得られなかった。

今回、研究者らは、レボフロキサシン、クローブ油、乳化剤、ポリマー、蒸留水、さらにナノスケールエマルジョンの粘度を向上させるためにカルボポールを使用したLFX−NEゲルを作製した。新規ゲルの特性をpHメーター、高速液体クロマトグラフィー、レオロジー分析を行って調査したところ、良好なテクスチャーを持ち、せん断減粘性を示した。さらに、半透膜を用いた薬物放出試験や、温度や湿度を変えながら3カ月保存した試験では、8時間以内に薬物を完全に放出し、3カ月間安定であることを示した。このLFX-NEゲルをマウスの熱傷における緑膿菌バイオフィルムに対して使用したところ、対照群と比較して、バイオフィルムの分散、完全な創閉鎖、再上皮化、コラーゲンの沈着がみられ、1週間以内に感染を除去し治癒を促進することが確認できた。

本研究は複雑な熱創傷感染症や、抗生物質に対する耐性が高いバイオフィルム感染症に対する新しい治療法として期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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