2023年03月
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欧米主要国やメキシコと次々に科学技術協力関係を強化・拡大 インド

インドは長年にわたり欧米主要国を中心に科学技術協力における関係を構築、強化してきた。ここに来て、その動きがますます加速されている。日本も科学技術振興機構(JST)や日本学術振興会(JSPS)などによる科学技術分野でのインドとの連携・協力関係が構築されてきているが、今後は、より積極的な協力関係の強化、拡大が望まれているのではないだろうか。

以下、英国、米国、ドイツ、フランス、メキシコ、スウェーデンとの最近の具体的な動きや取り組みについて紹介する。

1. 英国:

2022年12月14日~15日、インド科学技術庁(DST)と英国自然環境研究評議会(Natural Environment Research Council: NERC) および英国研究イノベーション機構(UK Research and Innovation: UKRI)傘下の工学物理科学研究評議会(Engineering and Physical Sciences Research Council: NERC)は、共同でワークショップを開催した。この2日間のワークショップは、環境センサーの分野でインドと英国の学術コミュニティ間のコラボレーションを構築し、研究とスタートアップのギャップと機会を特定するものだ。

インド側は、環境目標に対するインドのコミットメントを強調したが、これには、環境汚染の緩和と監視ソリューションの開発に向けた一貫した取り組みや、カーボン排出量を削減してネット・ゼロの目標を達成するための技術的な道筋が含まれている。また、ワークショップの冒頭では、炭素回収利用と貯留(Carbon Capture Utilization and Storage: CCUS)に対するDSTの取組みや貢献を強調し、「インドCO2隔離応用研究ネットワーク」(Indian CO2 Sequestrian Applied Research Network: ICOSAR)を設立したと述べた。また、CCUSに焦点を当てたイノベーション・チャレンジ(IC#3)に関する共同研究、開発、実証 (RD&D) のために、英国を含む他の21の加盟国と共に、インドが国際的なミッションイノベーション(Mission Innovation: MI) (※1)プラットフォームの一部になったことも強調された。

印・英両国は「清潔な水に関するインド・英国共同プログラム」も推進している。それは両国における新たな汚染物質の発生源とその行先を正確に理解し、低コストの環境監視センサー(LEMS)の開発を通じて管理戦略をサポートすることにより、水質改善を促進することを目的とした取り組みである。

2. 米国:

2023年1月、米国の国立科学財団 (NSF) のハイレベルミッションがインド科学技術省を訪問し、人工知能(AI)、サイバー セキュリティ、量子、半導体、クリーンエネルギー、高度ワイヤレス、バイオテクノロジー、地球科学、天体物理学、防衛、さらに、重要鉱物、スマート農業、バイオ経済、6G技術などの分野でも新たな協力関係の構築し、科学技術に関する二国間協力の高度化・深化について話し合いを行った。

同会議の詳細については "Science Portal India"の記事を参照(以下URL):
SPAP「科学技術の重要分野で協力関係の強化・深化を約束 米国立科学財団(NSF)がインド訪問

3. ドイツ:

2023年2月25日、インド科学技術庁と独フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer Institute for Solar Energy Systems: Fraunhofer ISE)は、水素技術に焦点を当てた長期的な協力に関する基本合意書 (LoI) に調印した。調印式には、インド・ドイツ科学技術センター (Indo-German Science & Technology Centre : IGSTC) (※2)の所長と、フラウンホーファーインド事務所長も出席した。このLoIでは、DSTが設定している水素エネルギークラスター関するより高い技術的対応性のレベル (Technology Readiness Level:TRL)の開発を促進し、インドの条件、環境に合わせて展開、調整がなされ、インドのエネルギー転換を加速する。

インドとドイツは、経済の脱炭素化という目標を共有しており、エネルギー安全保障と気候保全を協力して追求し、パリ協定の目標達成を促進するために、国内のグリーン水素経済を発展させることを約束した。

4. フランス:

2023年2月23日、インドCSIR-中央鉱業燃料研究所 (Central Institute of Mining and Fuel Research : CIMFR)、とフランス国立科学研究センター (French National Centre for Scientific Research: CNRS)が共同で主催し、インド・フランス先進研究推進センター(Indo-French Centre for the Promotion of Advanced Research: CEFIPRA) (※3)の支援を受けて、ニューデリーにあるCSIR-国立物理学研究所で、クリーンで持続可能なエネルギー技術に関する印仏ワークショップ 「INFINITE」が開催された。

そのワークショップで、インド科学技術庁(DST)のS.チャンドラセカール(S. Chandrasekhar)長官は、「2022年にインド政府は、100 GWの太陽エネルギー設備設置の目標を設定しているが、タール砂漠を太陽光発電の基地として利用することで、最大2,100GWの太陽エネルギーを生成することが可能となるであろう」と述べた。また、同長官は政府の別のイニシアティブにも言及し、2030 年までにガソリンにエタノールを20%混合し、ディーゼルにバイオディーゼルを5% 混合することを目標とする国家バイオ燃料政策について話し、クリーンエネルギーの分野でフランスとの協力強化を求め、ニューデリーのEV(電気自動車)と水素エネルギーへの移行計画を強調した。

インドは再生可能エネルギー技術と関連インフラストラクチャの開発において大幅な増強が必要である。特に、グリーンエネルギーの生成、貯蔵、変換、特にグリーン水素、グリーンアンモニア、およびエネルギー貯蔵技術などが重要となる。インドとフランスは、クリーンで再生可能なエネルギーに関する研究において長年にわたる二国間研究協力を行っているが、フランスに加えて、他のG20諸国とのパートナーシップの必要性もハイライトされた。

ワークショップ「INFINITE」は、両国の専門家と利害関係者が知識を交換し、協力分野を特定し、クリーンで持続可能なエネルギー技術の分野で協力するための新しい道を模索するためのプラットフォームを提供し、近い将来に具体的な成果につながることが期待されている。

5. メキシコ:

2023年3月4日、インドとメキシコは、航空宇宙、電子機器、土木、インフラ、エンジニアリング、生態学、環境地球・海洋科学と水、鉱業、鉱物、金属、材料; 化学製品(皮革を含む)および石油化学製品、エネルギー(従来型および非従来型)およびエネルギー デバイス、農業、栄養、バイオテクノロジー、ヘルスケア、などのいくつかの戦略的分野の重要な技術分野に焦点を当てた研究、技術、イノベーションの協力に関する覚書に署名した。この多分野にわたる歴史的な協定は、インドのジテンドラ・シン科学技術相と訪印したメキシコのマルセロ・エブラルド・カサウボン外相によって調印された。

ジテンドラ・シン科学技術相はメキシコ外相に対し、メキシコ側が掲げた水、リチウム、ワクチンの3つの優先分野は、科学技術省傘下のインド科学産業研究委員会(CSIR)他の姉妹組織によって対処・処理され、インドは今後数か月で具体的な結果をもたらすことを約束した。

6. スウェーデン:

2023年3月13日、インド科学技術研究委員会(Science and Engineering Research Board: SERB)と、スウェーデン研究・高等教育国際協力財団 (Swedish Foundation for International Cooperation in Research and Higher Education: STINT)との間で、協力覚書(MoC)が調印されたことが発表された。

このMoCでは、両機関は定期的な資金提供プログラムを通じて、研究者の流動性、交流の促進に対して資金を提供するとしている。具体的には、研究人材のモビリティ活動やセミナー、ワークショップ、会議を通じて学術協力を促進し、両国の若い科学者、研究者の間で円滑な活動の交流を可能とするもので、インド側は特に、スマートシティ、AI、量子コンピューター、輸送、その他多くの未来技術における共同取組みの推進を期待している。

今後SERBとSTINTは、両国の研究グループ間でのワークショップを含む人材交流のために使用される新しいプロジェクトへの資金提供に焦点を当てた公募を発表することになっている。

注:

  • (※1) ミッション イノベーション(Mission Innovation: MI): COP21で提唱され2016年に発足し、日本を含む23の国・地域が参加。クリーンエネルギー分野の研究開発についての官民投資拡大を促す国際イニシアティブ。 http://mission-innovation.net/
  • (※2) インド・ドイツ科学技術センター (Indo-German Science & Technology Centre : IGSTC) https://www.igstc.org/
  • (※3) インド・フランス先進研究推進センター(Indo-French Centre for the Promotion of Advanced Research: CEFIPRA): http://www.cefipra.org/

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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