2023年04月
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最も美しく強く結合されたダイバリオンの存在の証拠を発見 インド

インドを代表する基礎科学研究機関であるタタ基礎研究所 (Tata Institute of Fundamental Research: TIFR)は、数理科学研究所 (Institute of Mathematical Science: IMSc)と共同で、全体がボトム (ビューティー) (※)クォークで構築され深く結合されたダイバリオン(Dibaryon)の存在に関する強力な証拠を発見した。2023年3月17日付け発表。

インド格子ゲージ理論イニシアティブ (Indian Lattice Gauge Theory Initiative: ILGTI)の計算施設を使用して、TIFRのNilmani Mathur教授、大学院生のDebsubhra Chakraborty氏とIMScのM. Padmanath 博士は、この亜原子粒子の存在を予測した。予測されたダイバリオン (D6b) は、2つのトリプルボトムオメガ (Ωbbb)バリオンでできており、最大のビューティー・フレーバー (※)を持っている。その結合エネルギーは重陽子の40倍もの強度があると予測されており、目に見える宇宙で最も強く結合された美しいダイバリオンである可能性があるという。

バリオン(Baryon)とは、3つのクォークから構成される亜原子粒子であり、ダイバリオンは2つのバリオンで構成される素粒子のことだ。バリオン間相互作用によるそれらの形成は、核反応(恒星環境内核反応を含む)において、ビッグバン元素合成において基本的な役割を果たし、核物理学、宇宙論、天体物理学の間の繋がりを提供するという。また、それは核の存在の鍵であり、その質量の大部分を構成する強い力は、クォークのさまざまな組み合わせを持つ他の多数のダイバリオンの形成を可能にすると考えられているが、それらの存在の多くは観察されていない。ちなみに、重陽子は既知の唯一の安定したダイバリオンである。

この二分法を解決するには、強力な相互作用の基本レベルでバリオン相互作用を調査することが不可欠であり、今回の発見は、その相互作用における強い力の興味深い特徴を解明し、核結合の出現を説明するバリオン相互作用のクォーク質量依存性に関するさらなる体系的研究への可能性を開くものである。また、より重い新たな亜原子粒子を検索する研究の動機をもたらすとも考えられている。

同研究結果は、Physical Review Letters  の 130、111901 (2023) に掲載された。

(※) クォークは6種類あり,その区別をフレーバー(Flavor)と呼び、発見された順番に、アップ(u)、ダウン(d)、ストレンジ(s)、チャーム(c)、ボトム(b)、トップ(t)と呼ばれている。また、ボトム(b)はビューティーとも呼ばれている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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