2023年06月
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関節リウマチ治療に新たな選択肢―抗炎症薬と組み合わせた生体適合性ドラッグデリバリーシステム開発 インド

インド科学技術庁(DST)は、傘下の研究機関でパンジャブ州モハリにあるナノ科学技術研究所(Institute of Nano Science and Technology: INST)が、抗炎症薬である9-アミノアクリジン(9-aminoacridine:9AA)を充填した治療用ナノミセル(水に浸すと球状構造を形成する両親媒性分子)を開発したことを発表した。5月8日付け。

これが投与された場合には、NR4A1遺伝子 (核受容体サブファミリー4、グループA、メンバー1) の活性化により特定部位においての炎症仲介物質の阻害が示され、米FDA(食品医薬品局)承認薬物分子である蛍光9AAによって炎症促進性サイトカイン(生理活性タンパク質)を阻害することで炎症を軽減できるという。そのナノミセル自体に治療効果の可能性があるが、抗炎症薬と組み合わせて関節の損傷や軟骨の分解を抑制することで、関節リウマチを治癒する可能性が高まることが実験で示された。

9AAと天然化合物カフェ酸(CA)は、それぞれコーヒーとワイン(抗関節炎に効果があると報告されているが)に一般的に存在し、結合されてナノミセルにすることで関節リウマチの治療に使用することができるという。

新たに合成された生体適合性治療用ナノミセルドラッグデリバリーシステムと抗炎症薬の組み合わせは、関節リウマチを治療し、骨に柔軟性を与える軟骨の完全性を回復することで、病気に伴う痛みを改善する可能性も高い。この新たな治療法では、関節の損傷と軟骨の分解を抑制し、短期 (21日間)での治癒と長期(45日間)の再発防止効果を示したことが報告された。さらに、このドラッグデリバリーシステムはシンプルで費用対効果が高く、かつ安全であり、大きな可能性を秘めている。

この研究結果は、ACS Publicationsに掲載された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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