インドの科学技術省科学産業研究機構国立物理研究所(CSIR-NPL)の研究者らが、パスポートなどの書類に含まれる秘密データを暗号化して保護する、新しいセキュリティインクを開発した。科学誌nature indiaが4月25日に報告した。研究成果は学術誌nano micro smallに掲載された。

既存のセキュリティインクは不安定で、時間の経過とともに発光能力が低下し、しかもそのほとんどが有毒な物質から作られている。そこで、ビピン・クマール・グプタ(Bipin Kumar Gupta)氏率いる研究チームは、さまざまな発光材料と、特定の磁性ナノ粒子を組み合わせて、安全で効果的なセキュリティインクを合成した。

今回開発したセキュリティインクでプリントされたものは普段は黄金色にしか見えないが、紫外線を当てると赤と緑の光を放ち、レーザーを当てると青の光を放つ。またインクに含まれている磁性ナノ粒子は磁気文字認識機能を持っているため、パスポートや銀行小切手などの書類に含まれる秘密データや個人データを暗号化して保護することができる。

さらに、研究チームはこのインクを使用して特殊なQRコードも開発し、可視光線下では無色だが、紫外線やレーザー光の下でデータをスキャンすることに成功した。今後、このインクは軍事機器や医薬品など、他の分野での不正行為を抑制するためにも利用が検討されている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部