インド工科大学マドラス校(IIT-M)は、ワイヤレスセンサーネットワーク(WSN)でハッキングなどの攻撃を受けているセンサーにおいても正確な値を推定できるアルゴリズムを開発したことを発表した。5月23日付け。米コーネル大学の研究者らとの共同研究。研究成果は学術誌IEEE Transactions on Control of Network Systemsに掲載された。
農業、ヘルスケア、再生可能エネルギーなど、さまざまな分野においてWSNが使用されている。WSN内の各センサーは、温度、湿度などの物理的条件を監視し記録する。アプリケーションの増加に伴いWSNがハッキングなどの攻撃に対して脆弱になることが問題となっている。センサーへの攻撃は正常な機能を乱し、WSNの全体的な能力に混乱を及ぼす。そのため、センサーが攻撃を受けていてもパラメータを正確に推定できるようにWSNを運用できることが求められている。
IIT-M電気工学科のシャミック・バタチャリヤ(Shamik Bhattacharyya)氏、レイチェル・カルパナ・カライマニ(Rachel Kalpana Kalaimani)教授、コーネル大学電気・コンピュータ工学科のキラン・ロカデ(Kiran Rokade)氏は、センサー間で一方向通信が生じていても推定すべきパラメータの正しい値について正常なセンサーと攻撃を受けているセンサー双方の一致を得られる弾力分布推定アルゴリズムを考案した。
このアルゴリズムはResilient Estimation through Weight Balancing(REWB)アルゴリズムと名付けられ、各センサーノードの情報を調整する適切なウェイトを導入することで、ネットワーク内の情報の平均化を達成する。このアルゴリズムを用いた場合、センサーが推定すべきパラメータの値に収束する条件は、攻撃を受けたセンサーの数が全センサーの半分以下であることだけとなる。
インド工科大学カラグプール校(IIT-KGP)数学科のスワナンド・カレ(Swanand Khare)博士は「REWBアルゴリズムはウェイトバランスとレジリエンスの両方の考え方がうまく統合されたアルゴリズムです」と本研究を評価した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部