米国シンクタンク「カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)」のインドの政策シンクタンク、カーネギー・インディア(Carnegie India)はインドには人工知能(AI)ガバナンスの構築においてリーダーとなる機会があるとしつつ、同国のAIインフラ能力が他の国々に比べて限られていることを考えると、包括的な戦略が必要との見解を報告した。11月27日付。
同報告は、AIの開発とガバナンスに関して、米国、欧州連合(EU)、中国が主導する3つの主要なアプローチを紹介。具体的には、米国、英国、日本などの国は、業界による自主規制と指導原則を通じてAIを統治しようとしている一方、EUとカナダやブラジルなどの国々はAIの厳格な規制のための正式な法律を策定する方向に動いている。中国も規範的なアプローチを取っているが、特定のAI技術を統治するための詳細な規制の導入を目指している。こうしたアプローチの違いは、AI規制に対するグローバルなアプローチの細分化につながっている。
こうした中、まもなく世界第3位のAI大国になろうとしているインドはまだ、AIガバナンスに対するスタンスを決めていない。インドのアプローチは、欧米の規制制度の影響を受けている一方、国内政策の優先課題に根差している部分が大きい。したがって、他国が主導する既存の規制の枠組みに参加するのではなく、独自のAIガバナンス体制を策定することを選択する可能性がある。
また、インドは、全体的なAI関連リスクに加え、「グローバルサウス」と呼ばれる国々に共通する課題も抱える。そうした課題には、AIの学習に必要な大規模データやコンピューティングリソース、グローバルノースに由来する偏ったデータモデリングなどが含まれる。
こうしたことを踏まえ、同報告は、グローバルサウスに共通の課題にも対応する独自のアプローチを策定すると同時に、成長しつつある人口を生かした大規模AIデータベースの開発といった発展途上国の強みに立脚することで、インドはAI分野のグローバルリーダーとなる機会があるとの見解を示した。そして、そのためには、AIをめぐる多面的な枠組みが重要な役割を果たすと指摘した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部