インド工科大学マドラス校(IIT-M)は5月21日、金属材料工学科の研究チームが、慢性糖尿病創傷の治療を目的とした特殊な二層構造の被覆材(ドレッシング材)を開発したと発表した。
インドでは推定7700万人が糖尿病に苦しんでいる。糖尿病の合併症の1つに糖尿病性足潰瘍があり、傷口からの過剰な浸出液や炎症の長期化が起こり、重症化すると足の壊疽を引き起こす。
創傷用の代表的なドレッシング材であるガーゼや包帯は強度や耐水性が不足しており、重度の糖尿病性創傷には適していない。さらに単相のドレッシング材は頻繁に交換する必要があり、高齢患者にとって負担となる。そのため、二層構造のドレッシング材が検討されている。下層の多孔質層が滲出液を保持し最適な水分を維持する一方、抗生物質を含んだ上層のナノファイバー層が、最適なガス交換とともに、病原体や脱水などの外的要因から創傷を保護するものだ。
浸出液を保持するために使われる合成ポリマーは環境悪化につながる恐れもあるため、アガロース、カードラン、アルギン酸などの抗酸化作用をもつ天然多糖類の代用が期待されている。IIT-Mのサチン・ラティヤン(Sachin Latiyan)博士が率いる研究チームは、これらの天然ポリマーとポリビニルアルコールを組み合わせて、環境に優しい糖尿病性創傷用の新しい二層ドレッシング材を開発し、インド国内での特許を取得した。
このドレッシング材は傷の液体を管理する多孔質の下層(アルギン酸、アガロース、ポリビニルアルコールの混合材)と、感染を防ぐ抗生物質シプロフロキサシンを含むナノファイバーの上層(カードラン、アガロース、ポリビニルアルコールの混合材)で構成されている。創傷に対し、湿潤な環境を保ち、感染リスクを低減し、細胞の成長を助けることで治癒を促進することが証明されている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部