科学史家や博物館や研究所などのアーカイブ専門職員であるアーキビストによると、インドの科学史の記録保存が危機に瀕しているという。科学誌nature indiaが7月16日に伝えた。
インドの多様な科学史の記録を保存する取り組みは、専門家の不足、長期的な職位の欠如、史料保存に関する学術プログラムの不足によって妨げられており、インドの科学史の大部分の記録が失われる可能性がある。現在、機関のアーカイブ、科学者や技術者の個人書類、年次報告書、資金提供機関の記録などの保存が難しくなっている。
インド・ベンガルールにある科学博物館の創業取締役であるジャナビ・ファルケイ(Jahnavi Phalkey)氏は、「インドでは、アクセスしやすく多様なアーカイブや、科学の歴史学者、社会学者、哲学者のコミュニティが圧倒的に不足しています。アーキビストの訓練は、インド国立文書館などの限られた機関でのみ提供されており、長期的な職位や、科学史、哲学、社会学の学位プログラムも不足しています。デジタルファーストの現代にも関わらず、インドには物理的およびデジタルの保存基準がないことも大きな課題です」と指摘した。
英国王立協会科学史センターのデジタルリソースマネージャーであるルイジアン・フェルリエ(Louisiane Ferlier)氏は、AIを用いて18世紀および19世紀のインドの気象記録をデジタル化し、利用しやすくする計画を進めている。ベンガルールの国立生物科学センター(NCBS)のアーキビストであるヴェンカト・スリニヴァサン(Venkat Srinivasan)氏は、「世界基準に準拠し、ローカライズすることで、長期的なキュレーションを保証できます」と指摘する。インド・ムンバイのタタ基礎研究所をはじめ、複数のアーカイブを設立したインディラ・チョードリー(Indira Chowdhury)氏は、「科学アーカイブ間の協力や相互に関連した研究史の理解など、科学の社会史を理解する必要があります」と述べた。イマーシブ・トレイルズ(Immersive Trails)社の最高経営責任者であるチェルシー・マギル(Chelsea McGill)氏は、「科学遺産に関する広報活動は、その場限りではなく慎重に計画する必要があります」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部