インド工科大学マドラス校(IIT-M) は8月6日、光ファイバー技術を活用し、妊婦の子癇(しかん)前症(PE)を検出するための感度、特異度、速度(3S機能)を備えたポイント・オブ・ケア(PoC)検査装置を開発したことを発表した。研究成果は、科学誌Biosensors and Bioelectronicsに掲載された。
PEは深刻な妊娠合併症で、罹患すると高血圧や臓器へのダメージを受ける。検査には、胎盤増殖因子(PlGF)というバイオマーカーを使用するのが一般的である。通常、PIGFは妊娠28~32週にピークに達するが、子癇前症の場合は妊娠28週以降にそのレベルが2~3倍減少する。
今回、IIT-Mとインドのベロール工科大学の研究チームは、妊婦のPlGFを検出するために、ポリマー光ファイバー(POF)を用いた超高感度プラズモニック光ファイバー吸光バイオセンサー(P-FAB)プラットフォームを採用した。POFは、取り扱いが簡単で、堅牢、かつコスト効率が高く、柔軟性に富んでいることが特徴である。また、U字型光ファイバーの表面修飾には、超分岐、単分散、球状、3次元構造を持つ第4世代ポリアミドアミン(G4-PAMAM)デンドリマーが使用され、この組み合わせが今回の研究で初めて試みられた。研究の結果、このP-FABプラットフォームが現場でのPE診断に非常に有望であることが判明し、PEによる世界的な死亡率と罹患率の低減に貢献する可能性がある。
産婦人科医のウマ・ラム(Uma Ram)医師は「現在、PEのリスクが高い人のスクリーニングと予防措置が標準的な治療として受け入れられています。PlGFは、妊娠初期と後期の両方で有用なバイオマーカーですが、輸送やコストに課題があります。この研究は、現場で迅速にスクリーニングを行い、PEのリスクが高い女性を特定する方法を提供しており、臨床研究での検証が進めば、命を救うために大きな変化をもたらす可能性があります」と述べ、研究の重要性を強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部