2024年09月
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曲がった時空での量子もつれを調査する新たな手法を紹介 インド

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は8月20日、曲がった時空における量子もつれの役割を定量化するために、量子プロセスを使用して時空の曲率を再構築する方法について、物理学部の研究者らの研究内容を紹介した。研究内容は科学誌American Physical Societyに掲載された。

量子もつれとは、量子力学が予測する二つの粒子がどれだけ離れていても互いに関連することができるという現象であり、量子コンピューティング、通信、暗号技術など、さまざまな量子技術に利用されている。この状態にある粒子は、その一方に対する物理的測定の影響が他方にも反映されるため、その量子状態は相互にリンクされていると見なすことができる。

弦理論、重力、宇宙論を専門とするハリ・K(Hari K.)氏、スバジット・バルマン(Subhajit Barman)博士、ダウッド・コタワラ(Dawood Kothawala)教授らが行ったこの研究では、量子場の真空状態、つまり量子場の最も低いエネルギー状態を考察した。真空状態には粒子が存在しないものの、完全に空ではなく、量子場は依然として揺らぎを示し、この揺らぎが仮想粒子を生み出す。さらに、これらの揺らぎを研究するためにUnruh-DeWitt検出器を用い、理論上ではこの検出器が量子場のもつれを転送できることを示した。特にこの研究では、曲がった時空を移動する二つの検出器が考察され、これらの検出器が曲がった時空内の量子場と有限の時間で相互作用するという。

研究の結果、特定のパラメータ空間において、曲率がもつれを誘発する特徴があることが発見され、もつれが時空曲率のプローブとして利用できる可能性が示された。この研究は、一般的な曲がった時空における量子もつれを調査する新たな手法として、非常に広範な応用範囲を持つ。

フランス・パリのエコール・ノルマル・シュペリオール物理学研究所(LPENS)のヴァンサン・ヴェナン(Vincent Vennin)教授は、この研究について「エルウィン・シュレディンガー(Erwin Schrödinger)が述べたように、もつれは量子力学の特徴的な性質であり、古典的な考え方からの全体的な逸脱を強制するものです。この研究は、宇宙論の文脈で特に重要です」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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