2024年10月
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機械学習を用いたチベット高原の地殻変動予測 インド

インド科学技術省は8月27日、機械学習技術を用いてチベット高原の地殻変動に関する速度ベクトルを予測し、プレート運動の特性評価の強化に役立てると発表した。研究成果は学術誌Journal of Asian Earth Sciencesに掲載された。

インド科学技術庁(DST)傘下のワディア・ヒマラヤ地質研究所(Wadia Institute of Himalayan Geology)の科学者らは、目的とする場所の速度ベクトルを得るため、機械学習技術を用いて地殻変動をモデル化した。

通常、地殻変動を監視するためには、電子基準点(CORS)を密集させたネットワークの構築を行う。一方、キャンペーンモード時に行うGPS調査は、既存のCORSネットワークを高密度化するために行われる。しかしながら、ロジスティクスの問題などにより、監視したい場所にGPSステーションを設置することが困難な場合がある。機械学習技術は、こうした状況下でGPSステーションの速度予測に役立てることができる。

研究者らは、チベット高原とその周辺地域に設置された1271カ所の常設連続GPSステーションとキャンペーンモードGPSステーションのデータを分析した。また、機械学習モデルのトレーニングには892カ所のデータを使用し、そのテストのために379カ所のデータを使用した。

この研究は、機械学習技術が速度ベクトルの予測に有効であることを実証しており、プレート運動の特性評価を強化する。予測された速度ベクトルと実際の速度ベクトルの間にある相関関係は満足できるものであった。機械学習技術を用いた予測モデルは、測地速度ベクトルを推定する上で信頼できるものと確認された。

研究者らは、任意のGPSステーションの位置を入力し、機械学習モデルから得られるトレンドに基づいて、速度ベクトルを予測した。予測された速度は、近隣のGPSステーションから得られた速度と同様のパターンを示した。測地学の分野において、この機械学習のアルゴリズムは、費用対効果の高い方法であり、顕著な成果を示している。

図1. グラフィカルアブストラクトは、問題提起、使用した手法、およびその活用、さらに実際の実装を示している。

図2. チベット高原および周辺地域におけるGPS観測点の座標。矢印の長さは結果として得られた速度ベクトルの大きさを示し、速度ベクトルの方向は北からの角度で測定されている。赤色で示された観測点の位置は訓練に使用され、黄色で示された観測点の位置はテストに使用される。

図3. SVM、DT、GPR予測モデルから得られた、目的の位置での予測速度ベクトル。
(出典:いずれもPIB)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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