全インド医科大学(AIIMS)の研究者らが率いるチームはコホート研究を行い、インド人に特有の乳がんの原因となる主要な遺伝子変異を特定した。科学誌nature indiaが9月14日に伝えた。研究成果は学術誌Scientific Reportsに掲載された。
研究チームは、97人のインド人の原発性腫瘍と、それに適合する血液サンプルを用いて、全エクソーム配列を調査した結果、インド人に特有の高い変異率を示す遺伝子が含まれていることがわかった。これらの変異の特徴を、ヒトのがんにおける体細胞変異の最大のデータベースであるがん体細胞変異カタログ(COSMIC)と比較した。
TP53、PIK3CA、KMT2CおよびZFHX3遺伝子は、インドのコホートサンプルの59%、34%、30%、29%で変異がみられ、COSMICデータベースのサンプルで見られた変異(それぞれ26%、29%、12%、12%)に比べ特徴的であった。TP53とZFHX3は腫瘍抑制因子として働き、PIK3CAは細胞シグナル伝達に重要な役割を果たすがん遺伝子である。KMT2Cは遺伝子制御およびクロマチンリモデリングに関与する。
がんに関連するある種の遺伝子は、一緒に変異するか(共発現)、同じ患者でほとんど変異しない(相互排他性)傾向がある。PIK3CAは、CCDC168遺伝子と同じ腫瘍ではほとんど変異しないか、全く変異しないことが判明し、この2つの遺伝子が別々の機序や経路でがんに寄与している可能性が示唆された。研究者らはこれらの知見から、遺伝子プロファイルに基づいた個別化治療の必要性が浮き彫りになったと述べている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部