コルカタにあるインド科学振興協会の研究者らは、合成ペプチドを用いて子宮頸がん細胞を死滅させることができると発表した。科学誌nature indiaが10月7日に伝えた。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。
この合成ペプチドは自己組織化して、がん細胞の脂質膜にイオンチャネルを形成する。さらに、がん細胞の核に浸透してG4と呼ばれるグアニン4重鎖(がんで大幅に増加する4本鎖の二次DNA構造)に結合することができる。最近の研究報告によれば、グアニン4重鎖は突然変異や欠失、組み換えを引き起こし、悪性増殖を誘発することが示唆されている。
ジョティルマーイー・ダッシュ(Jyotirmayee Dash)氏率いる研究チームは、グアニン4重鎖を持ったDNA構造をターゲットにする合成ペプチドに着目し、チアゾールベースのペプチドを合成し、子宮頸がん細胞と共に培養することで、その抗がん作用の可能性を調査した。この合成ペプチドはイオンチャネルを形成し、生体膜を越えて金属イオンを輸送し、ナトリウムイオンを増加させ、カリウムイオンを減少させることでイオンバランスを変化させた。
培養実験の開始から24時間後、合成ペプチドは細胞核に入り込み、がんに関連する遺伝子であるグアニン4重鎖構造を持つDNAを安定化させた。これによって、遺伝子のRNAとタンパク質のレベルが低下し、がん細胞が死滅した。この合成ペプチドは正常細胞を傷つけることなく、がん細胞だけを選択的に死滅させることができた。
研究チームは、今回の発見はがんや関連する重篤な疾患に対して革新的な治療戦略を提供する可能性があると考える。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部