インド工科大学マドラス校(IIT-M)は10月15日、IIT-Mの研究者らがタミル・ナードゥ州において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に報告された犯罪の発生とモビリティの関連についての研究を行ったと発表した。研究成果は学術誌Crime Scienceに掲載された。
モビリティは、犯罪の空間的分布や被害に影響を与えることで、犯罪のダイナミクスを形成する上で極めて重要な役割を果たしている。研究では、人が自由に移動できる能力を意味するモビリティと、犯罪の発生と通報との間に関連性がある可能性を報告した。
研究者らは、モビリティの制限が行われたCOVID-19のパンデミック期間と非パンデミック期間における犯罪活動を分析するため、タミル・ナードゥ州の公共交通を担う地域最大のバス会社の2010年1月から2022年12月までの10年間にわたる乗客と運行データを調査した。また、重大な暴行、殺人未遂、殺人、強盗、暴動などの凶悪犯罪の発生について、パンデミック期間とパンデミック以外の期間で調査した。研究では、XGBoostアルゴリズムと呼ばれる強力な機械学習モデルを用いて、起こり得たが実際は起こらなかった反実仮想予測を行った。
研究者らは、モビリティが一定の閾値を下回ると、モビリティと記録された暴力犯罪レベルとの間に強い相関関係が現れるという観察結果を得た。犯罪減少の大きな要因は、社会の混乱ではなく犯罪機会の減少であることが考えられた。
研究の結論として、パンデミックがストレスを生み出し、犯罪の動機を高めた可能性がある一方、パンデミックによるモビリティの制限と屋内で過ごす人々の増加が、凶悪犯罪の機会を減少させたと示唆された。この知見は、犯罪発生における機会の重要性を浮き彫りにし、困難な時期であっても犯罪機会を減少させることが、犯罪レベルに大きな影響を与えることを示唆する。この研究は、政府や法執行機関がモビリティの影響を留意することで犯罪発生の対応策に役立つと期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部