インド西ベンガル州にあるコルカタ大学とグールバンガ大学の研究チームは、薬剤を充填したナノキャリアを送達プラットフォームとして利用し、乳がんを効果的で正確に死滅させた。科学誌nature indiaが11月15日に伝えた。研究成果は学術誌APPLIED NANO MATERIALSとAPPLIED BIO MATERIALSに発表された。
研究チームは、pH応答性ナノキャリアを用いて、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞内に抗がん剤であるパルテノライドを送達し、がん細胞の増殖を抑制させた。これは他の臓器へのがん転移を止め、再発を促進する幹細胞の活性を抑えることができる。この革新的なアプローチは、特に転移性がんに対して、パルテノライドの効果的かつ正確な送達プラットフォームになることを意味する。
これまでパルテノライドは、がん細胞を死滅させる効果があるものの、水への溶解度や 生物学的利用率が低く、高用量で毒性を示すという課題があった。今回研究チームは、新たなナノキャリアを合成し、それに薬草であるナツシロギクに含まれるパルテノライドを充填した。そして、特定のTNBC細胞に対して、薬剤を充填したナノキャリアと薬剤のみのものをそれぞれ処理し、未処理の細胞と比較した。
その結果、ナノキャリアは腫瘍の微小な環境で優勢な酸性のpHレベルでのみ薬剤を放出したが、正常な体液や組織で示されるわずかに高いpHレベルでは薬剤の放出はなかった。研究チームは、この選択的な薬剤放出により、健康な細胞を温存しつつ、がん細胞を死滅できることを明らかにした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部