インド科学技術省(MoST)は、インドの科学者らが衛星に量子信号を送信する最適な場所の候補としてヒマラヤ高地のラダック地方ハンレにあるインド天文台(IAO)を選定したと発表した。研究成果は学術誌EPJ Quantum Technologyに掲載された。
量子鍵配送(QKD)を含む衛星を用いた通信は、地球規模で量子通信を行う有望なアプローチの1つである。量子信号の送信における最大の課題は、量子信号を大気圏に通し、受信衛星まで到達させることのできる場所を見つけることだ。量子信号の伝送の実現性を検討するため、量子通信の上りと下りにおける大気シミュレーションとそのニーズを満たす候補地の調査が行われた。
インドのラマン研究所(RRI)の科学者らは、国内にある3つの天文台で利用可能な既存のオープンソースデータを分析し、インド北部のラダック地方の高地に位置するハンレのIAOが最適であると結論付けた。RRIの量子情報・量子計算研究室(QuIC)の責任者である ウルバシ・シンハ(Urbasi Sinha)教授は、「ハンレは地上局など長距離の量子通信を行うのに必要な自然環境をすべて備えています」と語る。
発表された論文では、衛星ベースの安全な量子通信を確立するため、最大高度500kmの低軌道(LEO)を周回する衛星が検討された。この量子通信を確立するには、まず特定の場所にある地上局から、指定の衛星がその場所に近づくたびにビーコンを送信する必要がある。ビーコンが衛星に検出されると、衛星から地上局に別のビーコンを送信しロックする。これによって量子信号の送信が可能になる。この研究は、量子通信を目的としたインドの地上局の最終決定に先立ち、通信リンクの性能を評価するリンクバジェットを見積もるための基礎となる。
量子信号伝送のイメージ図
(出典:PIB)
(2024年12月6日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部