2025年03月
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国内初のがんゲノムデータベースを公開 インド工科大学マドラス校

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は2月3日、IIT-MのV.カマコティ(V. Kamakoti)学長がインドの乳がんゲノム配列生成の完了とインドのがんゲノムデータベースであるバーラトがんゲノムアトラス(BCGA)の公開を発表したと伝えた。

インドの全国がん登録制度プログラムの報告によると、9人に1人が生涯のうちにがんを発症する可能性があり、現在146万1427人が、がんと診断されている。2022年以降、がんの発生率は毎年12.8%増加している。インドは、がんの発生率が高いにもかかわらず、がんゲノム研究の世界では過小評価されてきた。またインドで多く見られるがんのゲノム構造が明らかでないため、インドのがんに特有の遺伝子変異は、診断キットや薬剤開発に反映されておらず、そのカタログ化も行われていない。

インドにおけるさまざまながんのゲノム全体像のギャップを埋めるため、IIT-Mは2020年にがんゲノムプログラムを開始した。このプログラムでは、全国から集められた480人の乳がん患者の組織サンプルから960の全エクソームシーケンスを行った。これらのデータは、IIT-Mをはじめとした複数の研究機関で分析され、匿名化された乳がんの遺伝子変異データとしてデータベース化された。

この研究は、がんゲノミクスと分子治療に取り組むIITMセンターオブエクセレンスが、インド政府の卓越した研究機関の構想の下で資金提供を受け実施された。公開されたゲノムアトラスは、がんの進行と進化の遺伝的基礎となる知見も提供され、インドの生物医学研究と医療制度が個別化医療のビジョンに向けた移行に役立つ可能性がある。

IIT-Mのカマコティ学長は、BCGAがインドだけでなく、世界の研究コミュニティにもたらすメリットを強調し、「私たちは、社会に対してIITM for Allの取り組みに忠実であり、脳データに続いて今年度2回目の健康関連データとなるがんゲノムデータを公開します。これにより、この致命的な病気を引き起こす原因について深い洞察が得られ、早期介入による予防に役立てられることを願います。BCGAは、インドのさまざまながんに関するゲノム全体像のギャップを埋めます。このデータベースは、早期診断や病気の進行、治療後の遺伝子変異をそれぞれ分類し、今日のインド人の乳がん患者を代表する遺伝子変異の概要を提供します」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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