インド工科大学デリー校(IIT-D)は2月17日、インドの送電網の安定性向上と再生可能エネルギー統合強化による、停電後の電力復旧に不可欠なブラックスタート機能の強化を目的にインドのグリッド・コントローラー・オブ・インディア・リミテッド(Grid Controller of India Limited)社傘下の北部地域負荷分散センター(NRLDC)と提携し、先進的ソリューションを開発したことを発表した。
NRLDCはインド北部地域の電力系統の安定性と信頼性を担保しているセンターで、複数の州にまたがる送電網の運用を監督し、リアルタイムの監視、負荷分散、州負荷分散センター(SLDC)との調整を通じて配電の最適化を測っている。インドの電力系統は、2024年7月31日時点で、再生可能エネルギーからの150GW超を含む総設備容量420GW超の世界最大級の同期送電網だ。エネルギー需要の増大と送電網の拡大により、停電時の強力な復旧メカニズム構築の緊急性が高まっている。
IIT-DとNRLDCの提携はブラックスタート機能の強化に焦点が当てられている。従来、ブラックスタートは水力発電とディーゼル発電機に依存していたが、再生可能エネルギーの統合が進む中で、インバーター・ベース・リソース(IBR)を使用したブラックスタート機能の確保が重要となっている。共同研究では、ハードウェアシミュレーションと実世界のシナリオを通じてIBRに基づくブラックスタート運用のテストと検証を行う。この研究の重要なポイントは、系統形成モードと系統追従インバーターモードの間の移行を管理し、電力復旧時に安定した電圧と周波数を確保し、混乱を最小限に抑えることにある。
IIT-Dエネルギー科学工学科長のヴァムシ・クリシュナ・コマララ(Vamsi Krishna Komarala)教授は「このイニシアチブは、インドの送電網を強化し、再生可能エネルギーのシームレスな統合を確保するための重要なステップとなります」と述べた。NRLDCのナバルン・ロイ(Nabarun Roy)専務理事は「インドの電力系統の規模はかつてないほど拡大し、複雑化しているため、エネルギー分野の拡大と発展を管理するためには、より新しい産業指向の技術革新が必要です。この産学共同の取り組みは、戦略的革新に向けた新たな一歩です」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部