インド科学技術省(MoST)は2月18日、傘下のインド宇宙物理学研究所(IIA)の研究チームによる、太陽コロナホールの熱および磁場構造の物理的パラメータを正確に推定する新技術についての研究成果を発表した。研究成果は、学術誌Astronomy and Astrophysicsに掲載された。
太陽コロナホールは、1970年代にX線衛星によって発見された低密度領域であり、惑星間空間に開いた磁場構造を持つ。この領域では、太陽から宇宙空間へ荷電粒子が放出されるため、高速(450~800km/s)の太陽風の主要な発生源となる。太陽風は地球の磁場と相互作用し、磁気嵐を引き起こして地上の通信などに影響を及ぼす。さらに近年の研究では、コロナホールの放射効果をパラメータ化することで、インドモンスーンの降雨量の変動を説明できることが明らかになった。このように、通信や気象への影響を理解するためにも、太陽コロナホールの熱的および磁場的構造の研究が重要である。
熱的構造とは、太陽および地球近傍の宇宙空間(ラグランジュ点)におけるコロナホールの温度、放射束、エネルギーの推定を指す。コロナホールの緯度による変化からその温度構造が分かれば、太陽深部での発生深度を推定することができる。一方、磁場的構造としては、放射フラックスとエネルギーの推定が重要である。これにより、惑星間空間へ放出される熱エネルギーの影響を推定することが可能となる。また、コロナホールの温度構造の緯度変化に関する情報は、間接的に磁場構造の推定につながり、最終的にはコロナホールの形成過程の解明に寄与する。
IIAの研究者は、太陽観測衛星SOHOの8年間のデータを用いてコロナホールの物理パラメータを詳細に解析した。その結果、コロナホールの温度構造には緯度による変化が見られない一方、磁場強度は赤道から極に向かって増加する傾向があることが明らかになった。これらの知見は、コロナホールが太陽深部から発生した可能性や、アルヴェン波の重ね合わせによって形成される可能性を示唆している。
図1 (a) & (b)
(a): 2001年4月1日 00:00:11 UTにおけるSOHO/EIT 195 Åの全円盤画像(検出されたコロナホールを含む)
(b): 与えられた閾値による南部のコロナホールの等高線マップ
図2
緯度ごとに示されたコロナホールの温度変動(青い三角で表示)。赤実線は最小二乗フィットを表し赤点線はすべてのデータポイントから計算された1標準偏差の誤差帯を示す。χ2は適合度の指標
(出典:いずれもPIB)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部