2025年03月
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宇宙の初期を映し出す巨大フィラメントの発見 インド

インドのプネーにある大学間天文学・天体物理学センター (Inter-University Centre for Astronomy & Astrophysics)のエシタ・バネルジー(Eshita Banerjee)氏とソウガット・ムザヒド(Sowgat Muzahid)氏らが主導した研究により、117億年前の宇宙にその長さ85万光年に及ぶ巨大な宇宙フィラメントが存在していたことが明らかになった。科学誌nature indiaが2月26日に伝え、研究成果は学術誌THE ASTROPHYSICAL JOURNAL LETTERSに掲載された。

この研究は、オランダのライデン大学、イタリアのミラノ・ビコッカ大学、米国のミシガン大学の研究者と共同で行われた。今回発見した宇宙フィラメントの規模は、天の川銀河の直径の9倍に相当し、長さは約8京kmとされ、光速でも端から端まで85万年かかる。研究者らは、117億年前に放射された光によりこのフィラメントを観測した。宇宙誕生から約138億年であることを考慮すると、この発見は銀河がまだ形成されつつあり、宇宙の構造が形作られた時代に光を当てたことになる。

宇宙フィラメントは、宇宙で知られている最大の構造物であり、宇宙の網の骨格を形成している。広大なガスの束であり、その存在は20世紀後半に理論化されたが直接観測することは困難だった。研究チームは、チリの超大型望遠鏡VLTに搭載された欧州の積分磁場光学望遠鏡(MUSE)を用い、遠方のクエーサーからの光を分析した。その結果、7つの銀河が直線状に並んでいることを確認した。これらは、その根底にあるフィラメントの存在を裏付けている。

本研究は、宇宙の構造形成におけるフィラメントの重要性を示すとともに、ダークマターの解明にも寄与する可能性がある。インドのクライスト大学の天体物理学者アルン・ケナス(Arun Kenath)氏は、「銀河の整列を研究することで、暗黒物質の分布や振る舞いについての新たな洞察が得られます」と述べた。

宇宙の進化に関する理解を深めるため、ヨーロッパの超大型望遠鏡(ELT)や次世代宇宙望遠鏡(NGST)などの観測装置が今後の研究に貢献することが期待される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部