2025年05月
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自閉症など神経発達障害を回復させる新たな治療法 インド

インド科学技術省(MoST)は4月4日、MoSTの独立研究機関であるジャワハルラール・ネルー先端科学研究センター(JNCASR)の科学者らが、自閉症や知的障害(ID)を患う患者に対して、他人への依存を軽減した生活を送ることを可能にする潜在的な治療法を見出したと発表した。研究成果は学術誌Aging Cellに掲載された。

現在自閉症スペクトラム症(ASD)やIDの治療に処方される薬剤は、症状の緩和を目的としており、特に脳の発達後に神経発達障害で観察されるフェノタイプの修正をするものではない。JNCASRのタパス・K・クンドゥ(Tapas K Kundu)氏とジェームズ・クレメント(James Clement)氏が率いる研究チームは、ASD患者に存在するヒトの変異syngap遺伝子に類似した変異syngap遺伝子を持つマウス(Syngap1+/−マウス)において、脳内のDNA関連タンパク質、ヒストン、あるいは染色体を構造的に支えるタンパク質のアセチル化が抑制されていることを発見した。

このアセチル化の背後にあるエピジェネティック酵素は、KAT3Bやp300であると考えられる。クンドゥ氏の研究チームは以前、この酵素の活性化因子であるTTK21を発見している。研究者らは、このTTK21とグルコース由来のナノ粒子を結合(CSP-TTK21)させ、Syngap1自閉症マウスに投与すると、脳内でアセチル化を誘導することを示した。

研究チームは論文の中で、脳が発達した後(人間の青年期)にCSP-TTK21が投与されると、Syngap1+/−マウスで、神経機能や学習、記憶を回復し、神経の再配置が誘導されることを示した。この論文は、ヒストンアセチル化と自閉症を初めて直接的に関連付けただけでなく、ASD治療に有望な扉を開いた。本研究は、Syngap1に関連したIDとASDのエピジェネティックな修飾を標的とすることで、患者が他人への依存度の低い生活ができる程度まで神経発達障害を回復させる新たな治療の選択肢を提供した。

(出典:PIB)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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