インドのCSIR中央皮革研究所(CSIR-CLRI)とエジプトのカイロにある砂漠研究センターの研究者らが、温暖な気候に適したクールレザーを開発した。科学誌nature indiaが4月7日に伝えた。研究成果は学術誌Diamond and Related Materialsに掲載された。
レザーは耐久性や高級感、機能性を象徴する素材で、主に寒冷地で着用される。したがって、レザーの衣類は、熱帯地方や砂漠では実用的ではない。この研究は、インドとエジプトの研究者らが、従来の体温調節に逆らうスマートレザーの開発を行った。相転移時に熱を吸収・放出する物質である相変化材料(PCM)を用いて、研究者らは微細な蓄熱素子でレザーをコーティングし、温度調節機能のある素材に変えた。
この開発において、研究者らは、化学合成物質や外部冷却剤を使用する代わりに、皮革産業から出される廃棄物に着目した。PCMはすでにスマートテキスタイルや気候対応型建築、ハイテクマイクロプロセッサーなどに広く使用されているが、レザーへの応用は目新しい。今回開発されたマイクロ・メソ多孔性活性炭-n-エイコサン複合体は、優れた熱安定性や形状保持性、熱吸収能力を持つ。
レザーの生産は、歴史的に地域的な分断をたどってきた。すなわち、インドやエジプトのような熱帯や乾燥地域が生産地となり、寒冷な地域が消費地となってきた。この研究は、この生産と消費のモデルに立ち向かい、ニューデリーでもニューヨークと同様にスマートレザーが消費される可能性があり、世界のレザー貿易の変化に道筋をつける。
地球温暖化が進み、ファッション業界が環境負荷の低減を迫られる中、産業廃棄物を利用した温度調整機能のあるレザー開発は、強力な解決策である。研究者らは、この素材が自動車の内装や家具、高温環境下で働く作業員の保護具などにも応用できると考えている。
また、PCMのコンセプトは、極寒の気候でもレザーを使用できるように拡張することができ、−40℃のような低温でも潜熱蓄熱を提供する。カイロの砂漠研究センターのアハメド・イブラヒム(Ahmed Ibrahim)氏は、「私たちは未来のためにレザーを再設計し、持続可能性と気候変動の両方に適応するイノベーションの開発に取り組んでいます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部