2025年06月
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トポロジカル材料の隠れた性質を検出する新手法を発見 インド

インド科学技術省(MoST)は5月26日、MoST傘下のラマン研究所の研究者らが、量子材料におけるトポロジカル不変量と呼ばれる位相空間の特性を検出する新しい手法を発見したと発表した。

トポロジカル不変性とは、切断や接着をすることなくある形状を別の形状に変形できる場合、両方の形状におけるトポロジカル不変量は同じであることを意味する。例えば、インドのワダ(ドーナツ型の揚げ物)とコーヒーカップはどちらも同じく穴が1つであるため、位相的には等価とされる。一方で、ワダとイドゥリ(穴のない蒸しパンのような食べ物)は穴の数が異なるため、位相的には等価ではない。この概念は、材料の特性を理解するうえで重要なものとなる。

一方で、トポロジカル絶縁体や超伝導体などの物質では、物質が量子レベルでどのように形作られるかによって電子は異なる振る舞いをする。これらの振る舞いの違いは、見た目ではなく、巻き数(1次元系)やチャーン数(2次元系)といった別のトポロジカル不変量によって定義され、物質中を粒子がどのように移動するかを決定する隠されたコードのようなものといえる。

図1. トポロジカル不変量を表すイメージ

今回、ラマン研究所のディビエンドゥ・ロイ(Dibyendu Roy)教授と博士課程のキラン・ババサヘブ・エステイク(Kiran Babasaheb Estake)氏は、運動量空間スペクトル関数(SPSF)の分析を通じて、スペクトル関数が隠されたコードのようなトポロジー的特徴を含んでいることを実証した。この手法により、電子系の隠れたトポロジカル不変量を、より直接的な測定なしに読み取ることができる可能性が開かれた。

図2. 巻数き(1次元系)やチャーン数(2次元系)のイメージ
(出典:いずれもPIB)

エステイク氏は「スペクトル関数は長年にわたり、電子の状態密度や分散関係といった物理量を調べるための実験ツールとして用いられてきました。しかし、電子系のトポロジーや位相的側面を調べるためのツールとは考えられていませんでした。今回の研究ではさまざまな例を通して、スペクトル関数にはシステムのトポロジーに関する特徴も含まれていることを実証しました」と語る。この研究は、トポロジカル物質を探索・分類する普遍的なツールを提供する可能性があり、量子コンピューターや次世代エレクトロニクス、エネルギー効率の向上に役立つ物性物理学の新発見への道を開くものである。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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