2025年07月
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インドで野生のトラの個体数が回復

研究者らが、インドでトラの個体数が回復していると報告した。科学誌nature indiaが6月3日に伝えた。研究成果は学術誌Scienceに掲載された。

インドのトラの個体数は2006~2018年の間に倍増し、生息範囲が30%拡大した。これは、南アジア全域でトラの生息地の分断化と人間による開発が進行する中での成果である。インドは現在、世界の野生のトラの約4分の3を擁している。これは、2022年までにトラの数を倍増させることを目指した2010年のグローバル・タイガー・リカバリー・プログラムにおけるインドの取り組みの成果の一部である。

このプログラムにおけるインドのアプローチは、土地の分離保全と土地の共有を両立させる二本柱の戦略であった。トラが生息する地域の脅威は、生息地の破壊、道路、鉄道、パイプライン、運河、送電線、農場、家屋、さらには密猟、ブッシュミートの消費、人間と野生動物の対立の激化など、トラの生息域全体の武力紛争や開発活動である。

土地の分離保全は、自発的または補償を受けて特定の国立公園や保護区からコミュニティを移転させることで、トラの生息地を創出する。人のいない地域は、現在、国内で繁殖しているトラの85%を支える。一方、土地の共有により、トラは分散し、6600万人以上の人々が住む景観の中で生息することを可能にした。これは、生息地の回廊や環境に配慮した土地利用の慣行、紛争を最小化する政策により可能となった。

インドのトラの個体数回復は、政治的意思と地元の人々の参加に支えられた科学主導の保全モデルにより実現している。しかしながら、その成功を維持するためには、違法行為に対する警戒や新たな投資、開発と生態系の慎重なバランスが不可欠となる。

インド野生生物研究所(WII)の元所長で筆頭著者のY.V.ジャラ(Y.V. Jhala)氏は、「密猟は依然として個体群を全滅させる可能性があります」と警告すると共に、「私が最も心配しているのは、生息地の断片化と獲物の枯渇がゆっくりと進むことで、人間と野生動物の対立や近親交配、地域固有のトラ個体群の絶滅につながることです。これらの影響は累積的であり、元に戻すことは困難です」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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