インド科学技術省(MoST)は6月24日、研究者らが太陽光や振動、人工知能(AI)を活用して汚染物質を破壊し、水の浄化を可能にしたと発表した。研究成果は学術誌Nano Energyに掲載された。
繊維業界から製薬業界まで多くの産業がメチレンブルー(MB)やコンゴーレッド(CR)などの有害な染料を含む廃水を排出している。これらの汚染物質は、生態系や人体に深刻なリスクをもたらす可能性がある。しかしながら、現在の解決策では大量のエネルギーや高価な化学物質を必要とするため、環境に優しくない。
インド科学技術庁(DST)傘下の研究機関でパンジャブ州モハリにあるナノ科学技術研究所(INST)の研究チームは、ピエゾ光触媒特性として知られる生分解性ポリ乳酸(PLA)から作られた3Dプリントの足場を設計した。この足場に、光と力学的エネルギーにさらされると汚染物質を分解するビスマスフェライト(BiFeO3)を触媒としてコーティングした。
この組み合わせは、ピエゾ光触媒のプロセスを可能にし、太陽光とわずかな振動により触媒を活性化させる。また、太陽光が十分に得られない曇りの日でも振動が触媒の働きを止めず、太陽光発電のみの精製を克服した解決策となる。
This illustrates the sunlight-activated piezo-photocatalysis of a BiFeO3-coated 3D-printed PLA substrate, effectively degrading dye using a powerful combination of sustainable solar energy, advanced catalysis, and predictive machine learning for environmental remediation.
(出典:PIB)
さらに、研究者らは機械学習モデルを訓練し、さまざまな条件下でシステムがどの程度うまく機能するかを予測した。この予測モデルの精度は、最大99%であり、システムを微調整することで最適化することを可能にした。このシステムによって、廃水サンプルからCRの98.9%とMBの74.3%を除去することができ、現在知られている最高クラスの性能を上回る。
これらを可能にするため、研究者らは、ゾル-ゲル法によるBFO(ビスマスフェライト)ナノ粒子触媒の合成、PLA足場の3Dプリンティングの開発、染料劣化のコーティングとテストの実施、性能を予測するための機械学習モデルの開発を行った。
このイノベーションは、生分解性で環境に優しく、低コストで再利用可能で、廃棄物や過剰な化学物質の使用を回避し、高効率で拡張可能である。また、化石燃料に代わって、再生可能エネルギーを活用した太陽光や振動を動力源とし、さまざまな業界や遠隔地のコミュニティへの適応が可能となる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部