2025年08月
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400万年前カシミール渓谷は亜熱帯、葉化石が明らかに インド

インド科学技術省(MoST)は7月10日、研究者らが、冷涼な地中海性気候で知られるカシミール渓谷が、かつて暖かく湿気の多い亜熱帯の楽園であったことを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecologyに掲載された。

この研究は、インド科学技術庁(DST)の自治組織であるビルバル・サーニー古生物学研究所(BSIP)に所蔵される故ビルバル・サーニー(Birbal Sahni)教授とG.S.プリ(G.S. Puri)博士のコレクションを利用し、カシミール渓谷のカレワ堆積物の葉化石と造山形成の調査によって古代の気候を明らかにした。これらの標本の多くは、驚くべき保存状態と多様性を示し、この地域の現在の気候である温帯にはない亜熱帯の植物分類群の存在を明らかにした。

研究者らは、過去と現在の植生の顕著な不一致に興味を持ち、カシミール渓谷の気候と地質構造の歴史を科学的に調査した。研究者らは、この植生の劇的な変化がピル・パンジャル山脈の地殻隆起と関連があると結論付けた。すなわち山脈が、徐々に隆起し、インドの夏のモンスーンが渓谷に到達するのを妨げた。

研究者らは、古植物学的手法であるCLAMP(気候と葉の多変量解析プログラム)を用いて、葉化石の形状、サイズ、縁の形状を分析し、温度や降水量パターンを特定した。さらに、気候範囲を推定するため共存アプローチという手法を活用し、植物化石を現代の近縁種と照合した。これにより、山脈が隆起するまでの温暖で降雨に満ちたカシミール渓谷の古代の環境のスナップショットを作成した。

この研究は、古環境復元の旅であるばかりでなく、未来の気候への窓でもある。数百万年前の地殻変動が気候に与えた影響を理解することで、気候システムの反応に関する重要な洞察が得られた。

現代の気候変動が降雨量と気温のパターンを変化させ続ける中、この研究は、科学者がこれらの変化に直面して生態系がどのように適応するか、または崩壊するかを予測するためのより良いモデルの構築に役立つ。さらに、環境変化に敏感なヒマラヤ山脈のような山岳地帯の保護の重要な鍵となる。

図1:カシミール渓谷に位置する化石産地を示す地図 (after Bhatia et al., 2025)

図2. カシミール渓谷から発掘された約400万年前の葉化石
(出典:いずれもPIB)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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