インド理科大学院(IISc)は7月31日、生化学科の研究者らがコケ類などの原始的陸上植物が用いる成長制御メカニズムを解明したと発表した。研究成果は学術誌Nature Chemical Biologyに掲載された。
本研究で解明したのは、細胞分裂を抑制するマスター成長因子であるDELLAタンパク質の制御機構だ。植物の成長を促進するためには細胞分裂を抑制するDELLAタンパク質を分解することが必要となる。花を咲かせ種子を作ることによって繁殖する顕花植物では、植物ホルモンであるジベレリン酸(GA)がジベレリン受容体GID1と結合し、DELLAをユビキチン化して分解する機構を持っている。一方で、約5億年前に陸上定着した初期植物であるコケ類はGID1を持っていないためDELLAに関連する成長と発達がどのように制御されていたのか分かっていなかった。
研究チームはモデル植物であるゼニゴケ(Marchantia polymorpha)を用い、MpVIHと呼ばれる酵素が生成するイノシトールピロリン酸(InsP₈)が、DELLAに結合してユビキチン化し、分解を促すことを発見した。研究はVIH遺伝子のノックアウトや、DELLA過剰発現体などの解析により確認された。
DELLAの研究は緑の革命にもつながり、高収量半矮性品種の誕生に寄与してきた経緯がある。本研究に関わったデバブラタ・ラハ(Debabrata Laha)助教授は「InsP₈依存のDELLA分解経路は胚植物全体に保存されている可能性が高く、農地減少下での収量向上に資する次世代作物改良につながる可能性があります」と述べた。現代の顕花植物でもInsP₈結合部位が残存しており、この知見は植物進化や細胞シグナル伝達の時間的変遷の理解にも役立つとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部