2025年09月
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H5N1インフルエンザウイルスにヒト適応変異を確認 インド理科大学院

インド理科大学院(IISc)は8月12日、H5N1インフルエンザウイルスの2.3.4.4b系統群にヒトへの適応能力を高める特定の遺伝子変異が存在することを発表した。研究成果は、学術誌Microbiology Spectrumに掲載された。

H5N1インフルエンザウイルスは約30年前に鳥類で初めて確認され、現在では哺乳類やヒトへの感染も報告されている。インフルエンザウイルスは新しい宿主に侵入すると遺伝子変異を起こし、その宿主に適応することが知られている。今回、IISc生化学部のケサヴァルダナ・サンヌラ(Kesavardhana Sannula)助教授の研究チームは、2.3.4.4b系統群がヒトインフルエンザ株と同様の変異を獲得しつつあることを明らかにした。

研究チームは計算論的手法を用い、鳥類由来のH5N1の7000配列、非ヒト哺乳類由来の820配列、さらにヒト由来のH1N1およびH3N2の3万5000配列を解析した。多重配列アライメントによる比較、系統樹の構築、変異部位の注釈を通じ、強い選択圧を受けるアミノ酸を特定した。その結果、ウイルスポリメラーゼ複合体(PA、PB2)、核タンパク質、ヘマグルチニン(HA)において変異が集中していることが判明した。これらの変異は、ヒト感染拡大を助ける「適応型」と、宿主内での生存にとどまる「バリア型」に分類された。さらに研究チームは数理モデルを導入し、2.3.4.4b系統群のヒト適応潜在力を定量化した。

また、どの動物がヒト適応力の高い株を保持するかについても検討した。その結果、キツネを宿主とする株はウシ由来株よりも高い適応力を持つことが示された。同助教授は「これは非常に驚くべきことです」と述べ、予想外の発見であると強調した。

筆頭著者であるランジャナ・ナタラジ(Ranjana Nataraj) プロジェクト研究員は「この系統は、過去のパンデミックを引き起こしたヒトインフルエンザ株と同じ重要な変異を獲得しつつあり、リスクの増大につながる可能性があります」と指摘した。研究チームは、感染拡大の兆候を早期に捉えるため、積極的な監視体制の強化が不可欠であると提言している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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