インド科学技術省(MoST)は8月14日、国内の研究チームが爆発性の水素や有毒な二酸化窒素を室温で高感度に検出できる新型スマートセンサーを開発したと発表した。研究成果は学術誌Sensors and Actuators B、ACS Applied Electronic Materials、Smallに掲載された。

研究室で製作された小型センサーデバイスチップを持つIISER-TVM のヴィナヤック・B・カンブル(Vinayak B. Kamble)准教授
(出典:PIB)
水素は燃料電池や輸送、産業利用におけるクリーンエネルギー源として注目されているが、低濃度でも高い可燃性と爆発性を持つ。そのため、水素漏れを確実に検知するセンサーの開発は安全確保に不可欠である。従来型センサーは高温動作や多大な電力を要し、携帯型やオンチップ用途には不向きであった。
今回、インド科学教育研究大学ティルヴァナンタプラム校(IISER-TVM)の研究チームは、酸化ニッケル(NiO)と酸化亜鉛(ZnO)を組み合わせたナノ構造を利用し、室温での高感度検出に成功した。NiOはp型、ZnOはn型半導体であり、その界面に形成されるpn接合が環境変化に極めて敏感に反応する。わずかな水素でも電気伝導性が大きく変化することが確認された。
研究にはIISER-TVM のヴィナヤック・B・カンブル(Vinayak B. Kamble)准教授、インド理科大学院(IISc)ナノサイエンス・エンジニアリングセンター(CeNSE)のナバカンタ・バット(Navakanta Bhat)教授らが参加した。チームは半導体製造技術を用いたNiOナノビームの精密加工と、低コストな溶液法によるZnO/NiO接合の成長の双方を試み、いずれも高い選択性を実現した。従来のパラジウム(Pd)系センサーに比べ、価格は1/10と安価であり、性能面でも優れているとされる。
開発されたセンサーは、燃料ステーションや車両、工業プラントでの水素漏れ検知、都市環境における揮発性有機化合物(VOC)監視などに活用できる。軽量であるため、防衛や航空宇宙分野にも応用が期待され、インドのグリーン移行目標の達成にも貢献する。
さらに研究チームは、NiO、CuO、ZnOを用いた酸化物半導体アレイをAIと組み合わせた研究を進めており、現在はCMOS互換プロセスで製造した原子レベルの薄膜構造による自己発電型センサーの開発に取り組んでいる。今後は産業界の安全・監視システムに標準搭載される可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部