インド理科大学院(IISc)は8月18日、膵臓のβ細胞におけるグルコースの取り込み機構が2型糖尿病(T2D)で阻害されることを解明したと発表した。研究成果は学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)に掲載された。
膵臓β細胞は食後に血糖値が上昇するとグルコースを取り込み、血流へのインスリン分泌を促す。グルコースの取り込みにはグルコーストランスポーター(GLUT)が関与している。GLUTは血糖上昇時にβ細胞表面へ移動し、グルコースの細胞内取り込みとインスリン放出を促進するタンパク質である。
研究チームは生細胞イメージングを用いて、ヒトで主要な役割を担うGLUT1とマウスで働くGLUT2の挙動を観察した。その結果、健康な細胞ではGLUTが膜に迅速に展開し、クラスリン依存性のエンドサイトーシスによって循環し続けることが確認された。一方、T2D患者由来のβ細胞では、この輸送がうまく機能せず、膜表面に到達するGLUTが減少していた。これによりグルコースの取り込み速度が低下し、インスリン分泌の準備が整った顆粒の膜へのドッキングが妨げられることが示された。特に食後に迅速に分泌されるインスリン量が減少し、血糖調節機能が弱まると考えられる。
本研究の筆頭著者で博士課程学生のアヌマ・パラヴィ(Anuma Pallavi)氏は「これまでの研究は、グルコースがβ細胞に入った後に焦点が当てられていましたが、私たちの研究は取り込みの段階に焦点を当てた点に特徴があります。トランスポーターの動態を理解することで、β細胞の機能を改善するための新たな介入点を見いだせます」と説明する。ニキル・ガンダシ(Nikhil Gandasi)助教授は「GLUTの輸送を正常化できれば、病気の進行を遅らせ、患者ごとの代謝状態に基づいた治療が可能になるでしょう」と述べた。
今後は、β細胞におけるグルコース取り込みを標的とした新しい治療法の開発が期待される。研究チームは過去に、植物由来分子フェオフォルバイドAがGLUTと相互作用してインスリン分泌を促すことも発見している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部