2025年10月
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コレステロールでスピン制御材料開発、量子情報処理基盤技術で有望 インド

インド科学技術省(MoST)は9月8日、傘下のナノ科学技術研究所(INST)の研究者がコレステロールを基盤とするナノ材料を開発し、次世代の量子技術やスピントロニクス応用の可能性を示したと発表した。研究成果は学術誌Chemistry of Materialsに掲載された。

アミット・クマール・モンダル(Amit Kumar Mondal)博士(左から2人目)と研究チームメンバーら
(出典:PIB)

スピントロニクスは、電子が持つ量子特性であるスピンを利用し、低消費電力で高効率の情報処理を可能にする次世代技術として注目されている。今回の研究では、心疾患との関連で知られる脂質の一種であるコレステロールの固有のキラリティー(左右非対称性)と柔軟性に着目した。これを有機骨格に導入し、さらに金属イオンと組み合わせることで、電子スピンを選択的に制御する材料の設計に成功した。

研究チームを率いたアミット・クマール・モンダル(Amit Kumar Mondal)博士は、金属イオンの種類や濃度を変えることで、電子が磁気スピンの向きに応じて分離される度合いを制御できることを実証した。さらに、単一のシステム内で両方向のスピンを操作できることも確認された。これは、わずかな化学的調整や非キラルな化学刺激を加えるだけでスピン情報の流れを切り替えられることを意味する。

この成果は、生体由来のコレステロールを利用したスピン材料の開発が、量子情報処理やバイオエレクトロニクス分野の基盤技術として有望であることを示すものだ。研究チームは、今回の方法が精密なスピン操作を可能にし、将来のエネルギー効率型デバイスの開発に寄与するとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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