2025年10月
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新しいニューラルネットワークで暗黙的境界値問題を解く インド工科大マドラス校

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は9月29日、IIT-Mの研究者らが、ニューラルネットワークを用いて微分方程式が暗黙的境界条件に従う暗黙的境界値問題を効率的に解く手法を開発したと発表した。

IIT-M数学部のシルパ・デイ(Shilpa Dey)氏とシュルティ・ドゥベイ(Shruti Dubey)教授は、従来の数値解析法に代わる新しいアプローチとして、直交多項式を活用したニューラルネットワーク(ONN)を構築した。数値解析法は体系的ながら計算コストが高い一方、ニューラルネットワークを用いると、導関数の離散化を必要とせず、高い精度と汎用性を持つ閉形式の解を得られる利点がある。

ONNは入力層・隠れ層・出力層から成るフィードフォワード型構造を持つが、本研究では隠れ層を直交多項式による関数展開ブロックに置き換えた。使用したのはルジャンドル多項式、ラゲール多項式、チェビシェフ多項式、エルミート多項式の4種類であり、学習にはエクストリーム・ラーニング・マシン(ELM)アルゴリズムを採用した。得られた結果は厳密解と比較され、優れた精度が得られることが分かった。

暗黙的境界条件とは、境界での値が未知関数を含む関係式として定義されるもので、流体力学、熱伝達、電磁気学など多くの分野で現れる。本研究では、このような暗黙的条件を満たす微分方程式にONNを適用し、従来手法よりも精度・安定性ともに優れた解を得ることに成功した。また、得られた閉形式解は、実際の物理システムの解析やシミュレーションに有用であることが示された。

著者らは今後、ONNとELMの組み合わせを遅延微分方程式や分数微分方程式へ拡張する予定だ。また、ELMアプローチは非線形微分方程式の取り扱いが難しく、今後これらの問題への適用範囲を広げる研究を進めている。

インド工科大学マンディ校(IIT-Mandi)のマノジ・タクル(Manoj Thakur)博士は「直交多項式とニューラルネットワークを融合したこの研究は、暗黙的境界条件の処理を洗練された形で実現しており、複雑なシステムの解析に新しい可能性をもたらします」と評価した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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