インド工科大学マドラス校(IIT-M)は10月14日、人工関節や骨プレートなどのインプラント表面に、細菌感染を防ぐ新しいTi-O-Znナノ複合コーティングを低温で合成する技術を開発したと発表した。
多くのインプラントは、チタン合金(Ti6Al4Vなど)やステンレス鋼などの強固で安全な材料から作られている。これらは軽量で強度が高く、耐腐食性があるため、関節などの永久的なインプラントに適している。しかし、インプラント表面における細菌感染が問題となる。表面でバイオフィルムを形成した細菌による感染症の治療は困難が伴うものとなる。これらの感染症を防ぐためにインプラントに特殊なコーティングやテクスチャが利用される。有望なものの1つとしてTi-O-Zn系ナノ複合コーティングが知られているが、コーティングのためには高温の処理が必要であったり、プロセスが複雑であったりという課題があった。
本研究は、IIT-Mの研究者らが従来必要だった高温処理(400℃以上)や後焼成工程を省略し、200℃での単一プロセスによるTi-O-Zn系ナノ複合コーティングを実現した。開発した方法では、純粋なチタン(Ti)および亜鉛(Zn)をターゲットに、アルゴン・酸素(Ar:O2)環境下で反応性マグネトロンスパッタリングを行い、Ti6Al4V基板上にZnTiO3を主体とするナノ複合膜を形成した。
試験の結果、このコーティングは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して約97%、大腸菌(Escherichia coli)に対して約99%の抗菌効果を示した。また未処理のチタン合金よりも優れた生体適合性があることも分かった。
シンガポール南洋理工大学(NTU)のムルケシャン・ヴァダッケ・マサム(Murukeshan Vadakke Matham)博士は「生体適合性と防汚性を兼ね備えた薄膜は、抗菌剤耐性(AMR)やバイオフィルム感染への新たな対抗策となります。IIT-Mチームの研究は高く評価されるべき成果です」とコメントした。同博士は、この技術が将来的に医療応用へ展開する可能性に期待を寄せた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部