インド工科大学マドラス校(IIT-M)は10月22日、曲面部位に発生する直径2~4cmの小型表在性がんを対象に、434MHz帯で動作する新しい温熱療法(ハイパーサーミア)用シングルアンテナアプリケーターを開発したと発表した。研究成果は学術誌IEEE Accessに掲載された。
放射線療法や化学療法は、がん治療において最も一般的な手法であり、手術後の補助療法(アジュバント療法)としても利用されている。その中で、腫瘍を40~44℃に加熱し、治療効果を高める温熱療法(HT)は、メラノーマや乳がん、頭頸部がん、子宮頸がん、軟部肉腫などにおいて有効性が示されている。
しかし、既存のHTアプリケーターは広範囲を対象とする設計が多く、顔や首などの曲面部位に発生する小さな腫瘍への対応が難しいという課題があった。
この課題を解決するため、IIT-M工学設計学部のラフル・チョードリー(Rahul Choudhary)氏とカビタ・アルナチャラム(Kavitha Arunachalam)教授は、開口部13.68cm2の小型単一アンテナアプリケーターを設計した。装置には一体型のコンフォーマルウォーターボーラス(水を満たしたバッグ)を備え、体表の凹凸面における空気層の発生を防ぐ構造となっている。従来装置よりも小型で、電力結合の安定性と局所加熱効率が向上した。
研究チームは、組織を模した層状および円筒ファントムを用いて、比吸収率(SAR)と加熱特性を評価した。さらに、ニワトリやウシの体外組織でも試験を実施し、434MHzで96%以上の電力結合効率を確認した。これらの結果から、開発したアプリケーターが局所的な小型表在性がんの温熱療法に適用できる可能性が示された。
インド・ムンバイのバラバイ・ナナバティ・スーパースペシャリティ病院放射線腫瘍科長のナグラジ・G・ヒルゴル(Nagraj G. Huilgol)博士は、「温熱療法はがん細胞を放射線や化学療法に対して感受性の高い状態にし、免疫反応を高めます。今回の取り組みは、インドにおける温熱療法に新たな活力を与える可能性があります」と述べている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部